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著…内田広由紀(視覚デザイン研究所)『巨匠に学ぶ配色の基本 名画はなぜ名画なのか?』

 先日ご紹介した『巨匠に学ぶ構図の基本』と同じシリーズです。

 ↑前作のレビュー

 今回は色使いや光と影の使い方などについての本です。

 改変されたaとオリジナルのbを見比べることで、平凡な絵と名画の違いを明らかにしようという内容。

 色を変えるだけで、絵の主役となるものや、絵が訴えかけてくるメッセージが全く別のものに切り替わるのがとても興味深いです。

 例えば、P18~19で紹介されている、シャガールの『ダフニスとクロエ フィレタスの教え』。
 カップルを青く塗ったaは、寂しくて静かな印象なので、「これはひょっとしたら遺体…? まさか…この恋人たちは森の中で心中でもしたのかな…?」と観る人を心配にさせます。
 オリジナルのbは、カップルが穏やかなオレンジに塗られていますし、頬が上気しているようにさえ見えるので、カップルが森の中でいちゃいちゃ幸せに抱き合っているように見えて物凄く羨ましい…じゃなかった、微笑ましい限り。

 また、P78~79で紹介されている、フェルメールの『青いターバンの少女(真珠の耳飾りの少女)』。
 ターバンを黄色くしたaは、少女が着ている服も黄色いせいか、自然な感じではあるけれど鮮烈な印象はありません。
 オリジナルのbは、ターバンが鮮やかな青に彩られていて、少女の黄色い服と青いターバンの対比のおかげもあって少女の表情が生き生きと見え、ハッとさせられる見返り美人画。

 また、P103~104で紹介されている、上村松園の『序の舞』。
 グラデーションを無くしたaは、たったそれだけオリジナルから変えただけなのに、余裕が無さそうで動きが感じられません。
 グラデーション有りのbは、余裕を持ち、優雅に舞っている感じ。

 画家がその絵を穏やかで優しい印象にしたいなら明度差が小さくなり、逆にハッキリと大胆な絵にしたいなら明度差が大きくなったり…。

 画家の狙いによって様々な表現方法が駆使されているんですね。

 P68~69に書かれている通り、光の使い分けも興味深いです。

 逆光は神秘性を、全光はクリアさを、順光はより自然な雰囲気を演出するそうです。

 光だけでなく、闇もまた表現を豊かにしています。

 世の中の何もかもが表現方法として使えるんですね…!

 この本のページを捲る度、画家たちの凝らした工夫の数々に驚かされます。

 ほんのちょっとの違いで印象が変わる、というのは絵に限らず全てのことに通じると思うので、わたしも美的センスを日々磨いていきたいです。




 〈こういう方におすすめ〉
 色、光、影の使い方について勉強したい方。

 〈読書所要時間の目安〉
 2時間くらい。

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