著…久保田沙耶『漂流郵便局 届け先のわからない手紙、預かります』
こんにちは。
誰かに伝えたくても伝えられない想いがある方におすすめの本をご紹介します。
この本に出てくるのは、瀬戸内海に浮かぶ粟島の「漂流郵便局」。
この不思議な名前の郵便局は、たくさんの人たちの協力によって生まれ、今も手紙を受け付けているそうです。
※コロナ禍のため臨時休館していましたが、2022年3月26日から再開予定とのこと。詳しくは下記のリンクをご覧ください。
漂流郵便局で受け付ける手紙の一番の特徴は、届け先が書かれていないこと。
普通の郵便局なら「宛先不明」扱いとし、差出人のところに手紙が返ってきますよね。
でも、漂流郵便局に託した手紙は違います。
宛先不明にはなりません。
だから、差出人は「もしかしたら相手に手紙が届いているかもしれない」と思うことが出来ます。
漂流郵便局の局員は、「漂流私書箱」と名付けられた不思議な装置に手紙を差し込み、この装置を回転させます。
まるで瓶に詰めた宛名のない手紙が波間を漂い、いつか波打ち際やそれ以外のどこかへ辿り着くように、漂流私書箱に差し込まれた手紙は手紙と手紙の狭間を漂いながら、宛先に向けて語りかけ続けるのだそうです。
なんだか神秘的…。
この本には、そんな漂流郵便局へ全国から寄せられた手紙の一部が紹介されています。
神様へ。
亡くなったお母さんへ。
これからふたりが過ごす時間へ。
あの日のお姉ちゃんへ。
おとうさんとおかあさんのだいじなだいじなあなたへ。
100年後にわたしと同じ本を借りる人へ。
わたしのめがね様。
など、宛先は様々。
過去も未来も場所も超越し、生物であるか非生物であるかも関係なく、誰かが誰かに伝えたい想いはこんなにも強いのだと驚かされます。
手書きの手紙はもちろん、手紙の文面を活字に直したものもこの本に掲載されていますが、手書きのものの方が心がこもっている気がしてグッときます。
文字だけでなく絵を描き添えている差出人もいて、きっと伝えたい想いを文字で書ききれず、絵に託したのだろうなと想像を掻き立てられます。
わたしは特に、P66掲載の、
天国の友人宛に同窓会のお知らせの往復ハガキを出し、「天国の友よ当日は全員UFOで来るよう」と手書きでメッセージを添えた差出人のセンスに心惹かれました。
わたしも亡くなった友人や家族へ往復ハガキを出したいです。
「ハガキありがとう! 読んだよ! 返事がてら遊びに来たよ!」とUFOから降りて来て欲しいです。
感謝したいこと、謝りたいこと、報告したいことなど、話したいことがたくさんあるから。