編…ナショナルジオグラフィック『本当にあった奇跡のサバイバル60』
「階段の奇跡」や「ハドソン川の奇跡」といった有名なものを含めて、北極や南極といった極限の地での遭難、脱獄、戦争、難破、誘拐・人質といった状況から生き抜いた世界中の人たちのエピソードを紹介している本。
※注意
以下のレビューには残酷な描写を含みますので、苦手な方はご注意ください。
ほとんどが、「もしこんな目にあったら狂ってしまっても仕方が無いだろうな…」と思える過酷なものばかり。
たとえば、
●南極に取り残され、食糧が無くなり、そり犬の肝臓を食べて生き延びた結果、中毒に陥った。肌が黄色くなって皮膚が剥がれ、髪と爪が抜け落ち、衰弱し、暴れ、凍傷になった自分の小指を食いちぎった末、死亡した人
●地中海で難破し、疲労と体温の低下によって錯乱。暑い暑いと言ってジャケットを脱いで海に投げ捨ててしまい、体が寒さに耐えきれず死亡した人
といったエピソードが載っていて背筋が凍ります。
また、
●飛行機がアンデス山脈の山中に墜落。飛行機が白かったため、機体が雪に紛れてしまって正確な墜落地点が分からず、捜索隊が「生存者はいない」と捜索を打ち切ってしまった。生存者たちは捜索打ち切りのニュースを、飛行機の残骸から拾ってきたラジオで聞いた
というエピソードにもゾッとしますが、この生存者たちはなんと生還を果たします。
誰も自分たちを助けに来ないと分かったこの時点で正気を手放してしまってもおかしくないのに。
なんと彼らは「今より気候が暖かくなるのを待って助けを呼びに行こう」と決め、それからなんと2か月以上もの間生き延びたのです。
厳しい寒さ、高山病、雪崩、そして激しい飢餓に襲われながらも、死んだ仲間の肉を食べることで、どうにか命を繋いだそうです。
そして生存者のうち3人が自力で山中を脱出して救助を求め、残りの生存者たちも助かった、というから驚きです。
諦めなかったのが凄い…!
この本を読んでわたしが思ったのは、もし「自分が助けを呼びに行って仲間を救わないといけない」とか「自分が誰かを励まさないといけない」といった場合、人はどんなに極限の状況に陥っても最後の最後まで諦めないのではないか? ということ。
この本に載っているエピソードを読むと、周りに人が居たとしても狂ってしまう人はいるのですが、とはいえ、自分が死んだら他の人まで死んでしまうという状況だと気の持ちようが全然違う気がします。
だから、たとえば5人で遭難したら、5人それぞれに役割を割り振った方が良いのでは無いでしょうか?
リーダー格の1人が頑張るというのではなく、それぞれが自分に出来る範囲で役割を果たす形で。
勿論、まず遭難する機会が訪れることが無いのを願うばかりですが…。
「生きたい」という本能に加えて、「生きなければならない」という、プレッシャーにもなるけれども確かな存在理由が必要な気がします。