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Photo by
ayakonishihara
著…柏井壽『鴨川食堂』
もう一度食べたい、懐かしい味。
でも、食べたくても、もう食べられない。
作ってくれた人が亡くなっていたり、お店が無くなっていたりするから。
レシピが分からないので、自分で作ったり、誰かに作ってもらうということは出来ない。
食べたのは大分昔だから、どんな味だったのかという記憶も曖昧。
お店の名前も思い出せない。
一緒に食べた人の名前すら思い出せない。
…でも、どうしても諦められない。
そんな「想い出の味」を再現してくれる食堂を描いた小説です。
「鴨川食堂」は探偵事務所と食堂とが併設になっているので、依頼者がわずかに覚えているキーワードからレシピを推理して、忠実に料理を再現してくれます。
「鴨川食堂」が本当にあったら良いのに!
この小説では、東本願寺のそばにあって看板もない食堂…という設定だから、そんな場所をわたしも探しに行きたいです。
「想い出の味、捜してください」と訪ねて行きたい!
あくまで小説だから、本当はそんな食堂は無いと分かってはいても…。
懐かしい料理を食べることが出来たとしても、その料理を一緒に食べてくれた懐かしい人を生き返らせることは出来ないと分かってはいても…。
この小説に出てきた依頼者たちは、想い出の料理を食べることで、その想い出に留まることなく、前向きに未来へと歩き出します。
それがとても素敵。
お涙ちょうだいではなく、さらっとしたストーリー展開なので、胃もたれしない読後感の小説です。
〈こういう方におすすめ〉
もう食べられない「想い出の料理」がある方。
〈読書所要時間の目安〉
1時間半〜2時間くらい。
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