文…ナンシー・ウィラード 絵…トミー・デ・パオラ 訳…福本友美子『さあ、しゃしんをとりますよ』
写真屋さんが靴屋の夫婦の記念写真を撮ろうとするところから始まる絵本。
でも、ちっともうまくいきません。
※注意
以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。
靴屋の夫婦は、帽子をかぶったり靴を履き替えたり、なぜかスプーンとバイオリンを持ったりと、全然落ち着きがありません。
写真屋さんはその度に「しゃしんは、ありのままがいいんですよ」と言うのですが、しまいには靴屋の夫婦は、古い靴を足に履き、新しい靴を耳に履き、赤い帽子と青い帽子を被り、カボチャとニンジンとスプーンとバイオリンとパイを持ち、夫婦の前にはヒマワリの絵と飼い猫を配置する、という謎のスタイルで写真撮影に臨むことに!
一体何を意識しているのやら?
写真屋さんが「しゃしんは、ありのままがいいんですよ」と何度言ってもこの夫婦、話を全く聞きゃあしない。
もし写真屋さんが「ありの〜ままの〜♬ 姿見せ〜るの〜よ〜♬」と歌い出しても不思議はありません。
写真屋さんはプロなので、歌い出したりせず、仕事に徹していますけれど。
でも、写真屋さんがスタンバイし続けているというのに、この夫婦、笑いやしない…。
お願いだから笑って!
写真屋さんのライフはもう0よ!
と、この絵本を読んでるわたしはハラハラしてしまいました。
靴屋の夫婦の飼い猫のほうが、飼い主よりずーっと利口です。
微笑みを浮かべているように見えますし。
堂々としていて、風格たっぷり。
あれこれ小道具を変えようとしたりせず、この猫は、身一つと眼帯一つだけでカメラの前にきちんと前足を揃えて座っています。
…そもそもどうしてこの猫が眼帯をしているのかが一番気になるところなのですが、そこはこの絵本の中では一切触れられていません。
気になる!
さて、結局、記念写真は無事に撮れたのでしょうか?
気になる方は、ぜひこの絵本を読んで結末を確かめてください。
わたしは結末まで読んで、この写真屋さんにリポビタンDとかユンケルをそっと渡してあげたくなりました。
お仕事って本当に大変ですね…。
〈こういう方におすすめ〉
カオスな絵本を読みたい方。
〈読書所要時間の目安〉
10分くらい。