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著…本谷有希子『あの子の考えることは変』

 女性二人の、爽やかさなんてどこにもない、痛々々々しい、でも寄り添い合っている同居生活を描いた小説。

 ⭐️Kindle版

 ⭐️単行本版



 ※注意
 以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。



 二人が住んでいるのは壁の薄いボロアパート。

 なんせ女性二人なものだから、露骨な会話が遠慮なく展開されます。

 「ルームシェア」なんてお洒落な言葉は相応しくない感じです。

 一人は巨乳、一人は貧乳という凸凹コンビなものですから、

「Cカップ以下の女からはもう全員罰として乳首を毟り取るべきだよね」

(著…本谷有希子『あの子の考えることは変』P9から引用)


 なんて恐ろしい会話だって登場します。

 えーっ、それって何罪!?

 何の罰!?

 そんな風に思いがけないセリフも飛び出す作品ではありますが、「この小説を読んでいるとなぜだか涙が浮かんでくる…」という女性は少なくないのではないか? とわたしは思います。

 なぜなら、女性のリアルな悩みが赤裸々に綴られているから。

 巨乳ちゃん(名前は巡谷)は「セフレ」という立場から「彼女」に昇格出来ないで苦しんでいますし、貧乳ちゃん(名前は日田)は処女ですが狂おしいほどの性欲と凄まじい孤独に苛まれています。

 こういう悩みを抱えている方って少なくないのではないでしょうか?

 巨乳ちゃんと貧乳ちゃんは、なんだかんだ言いつつも、いつも二人で居るから一見寂しくなんてなさそうに見えます。

 けれど、それぞれが異なる苦悩を抱えているから、それを分かち合うことは出来ません。

 相手のことを知ろうとすることは出来るけれど、理解することは出来ません。

「私、孤独じゃないってのがどんな感じなのか一瞬でいいから知りたいだけなんだ…!」

(著…本谷有希子『あの子の考えることは変』P112から引用)

 という貧乳ちゃんの言葉が、妙にぐさりと読み手の心に刺さります。

 「青春物語」と形容するには余りにあけすけな作品だけれど、わたしはこの小説を何度も読み返してしまいます。

 人は結局ずっと一人。

 だから、孤独でなくなることは難しいかもしれません。

 が、孤独な者同士がそばにいることは出来ます。

 それだけでもまし。

 本当のひとりぼっちよりも。

 わたしはこの二人が羨ましいです。

 せめて、一緒にいてくれる相手を見つけたのですもの。



 〈こういう方におすすめ〉
 女性同士の赤裸々な友情を描いた小説を読みたい方。
 下世話なエピソードも平気な方。

 〈読書所要時間の目安〉
 2時間くらい。

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