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著…江戸川乱歩 カラー口絵…宮崎駿『幽霊塔』
大正時代。
いわくつきの時計屋敷あり。
そこには財宝が隠されているらしい。
屋敷の内部はあまりにも複雑なつくり。
だから、人が迷い込んでは出られなくなってしまう。
一人、また一人、と死んでいく。
もっと、もっと、と誘うかのように血の臭いが立ち込める。
そんな時計屋敷に、ある日ひとりの美女が現れた。
彼女は主人公に「野末秋子」という清々しい名前を名乗った。
艶やかでありながらも、どこか可憐な様子もある彼女と共に、主人公は時計屋敷の謎に巻き込まれていって…。
…という設定を聞いてゾクゾクしてきた方におすすめの小説。
江戸川乱歩が織り成す怪奇の世界を堪能出来ます。
なお、宮崎駿監督は子どもの頃にこの作品と出会い、妄想を膨らませ、それがのちに『カリオストロの城』へと繋がっていったそう。
ストーリーは大きく異なりますし、時計塔の様子も違うのですが。
仄暗さ。
息が詰まりそうな死の気配。
不気味に進む時計の針。
言われて見れば多くの共通点があることに気付かされます。
そして、ヒロインたちが悲しい身の上だということも…。
秋子も、クラリスも、どうしてこんなにも不幸が似合う美女がいるのでしょうね?
幸せになって欲しいのに…。
さて、江戸川乱歩は子どもの頃に黒岩涙香の『幽霊塔』を読んでこの小説を書いたのだそう。
黒岩涙香はというと、A.M.ウィリアムスンの『灰色の女』をベースに『幽霊塔』を書き上げたのだそう。
『幽霊塔』の系譜を調べていったら一体どこにたどり着くのか…、想像するだけでワクワクしてきます。
きっと芸術というものは次世代の芸術家に影響を与え続けるのでしょう。
今を生きる世代もまた、この江戸川乱歩の『幽霊塔』や宮崎駿監督の『カリオストロの城』からインスパイアされ、また新たな『幽霊塔』を創り出していくのかもしれません。
…そう考えると、よりいっそう身震いしてきます。
まるで幽霊塔が不死の命を得たかのようで。
〈こういう方におすすめ〉
江戸川乱歩ワールドを堪能したい方。
〈読書所要時間の目安〉
3時間半〜4時間くらい。
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