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文…内田麟太郎 絵…味戸ケイコ 『うまれてきたんだよ』

 わたしは初めてこの絵本を読んだ時、ショックで固まってしまいました。

 数年ぶりに今日本棚から引っ張り出して読み返すのにも、とても勇気が要りました。

 それは、ここに何が書かれているかを知っているから…。

 けれども、一人でも多くの方に、せめて一生に一度は必ず読んでいただきたい絵本です。

 そうすれば、児童虐待を他人事ではなく自分にも関わることとして問題意識を持つ方が増えて、一人でも多くの子どもの命が救われるかもしれませんから…。


 ※注意
 以下の文は、結末まで明かすネタバレを含みます。



 全ての子どもが愛してもらえるわけじゃない。

 全ての子どもが長く生きられるわけじゃない。

 殴られ、閉じ込められ、お腹を空かせたまま亡くなる子どももいる。

 笑うことを知らずに。

 抱っこされることを知らずに。

 愛されることを知らずに。

 せっかく生まれてきたのに…。

 …そんな悲痛なメッセージが伝わってくる絵本です。

 今、わたしは「悲痛」という表現を使いましたが、果たしてこの言葉を当てはめて良いのかすら分かりません。

 「寂しい」「悲しい」「苦しい」…、色んな感情がせめぎ合うけれど、どう表せば良いのか分かりません。

 せめて、この絵本の最後のページに書かれている、

かぜが そのとき いってくれたんだって。「ようこそ あかちゃん」って。

(文…内田麟太郎 絵…味戸ケイコ 『うまれてきたんだよ』から引用)


 が、この子の幸せな生まれ変わりを意味してくれていたらいいのに…とわたしは思います。

 …けれど、もしもこの子が生まれ変わっても、また殴られて、抱きしめてもらえないのだとしたら…?

 再び、

 「わらうって どんなこと?」

 「だっこって なあに?」

 「『いいこ いいこ』ってなあに?」

 と救いを求めながらも、誰にも応えてもらえず、殺されるのだとしたら…?

 …想像するだけでもゾッとします。

 しかし、きっと今この瞬間も、現実のどこかでも誰かが子どもを虐待しているのだと思います。

 虐待に気づいても「他人の家庭のことだから…」と見て見ぬフリをしてしまえば、それは自分も虐待に加担しているのと同じ。

 一人ひとりに出来ることは限られますが、放置していれば、この絵本に出てくるような子どもが増えてしまうかも…。

 「虐待かも?」と思った方は、まず児童相談所虐待対応ダイヤル「189」に相談をお願いします。



 〈こういう方におすすめ〉
 児童虐待に警鐘を鳴らす絵本をお探しの方。

 〈読書所要時間の目安〉
 1時間くらい。
 文章量が少ないので、実際には10分足らずで「読める」のは読めるのですが。
 読んだ後ズンと心が沈んで、しばらく尾を引くので…、気持ちの切り替えに1時間ほど要すると思います。

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