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著…宮田珠己『ニッポン脱力神さま図鑑』

 マスコット的な可愛らしさを漂わせる、全国各地の神さまたちの像。

 これは、地域住民による手作り感溢れる神さまたちを、カラー写真付きでコミカルに紹介している本。


 きっと地域の方々が神さまに長年寄せる愛の温もりゆえなのでしょう。

 どの神さまもまったりゆる〜い雰囲気。

 だから、写真を眺めていると、なんだかどの神さまにも親近感が湧いてきます。

 この本の冒頭で、南九州の「田の神さあ」が登場することに、わたしはとても驚きました。

 ちなみに「たのかんさあ」と読みます。

 鹿児島生まれ鹿児島育ち、宮崎県にもしょっちゅう遊びに行っているわたしにとって、子どもの頃からとても馴染みのある神さまです。

 お地蔵さんみたいな感じで、田んぼのあぜ道によくいる、見慣れた存在。

 田んぼ仕事を終えた人々が、田の神さあのそばでおにぎりを食べたり麦茶を飲んだりしている…。

 それが、子ども時代にわたしがよく見た情景です。

 田の神さあは、眉目秀麗なタイプの神さまとは違って、味わい深いというか、シュールというか、ユーモラスな感じ。

 わたしは子どもの頃、田の神さあが「神さま」というよりも近所のおじちゃんおばちゃんみたいに思えたので、よく田の神さあの前を通り過ぎる時は「こんにちは」と挨拶していました。

 大人になった今では田の神さあと滅多にお目にかかっていないのですが、この本によると、

 (中略)秋の収穫後に近隣の農家が集まって講組をつくり、餅を供え、ときには田の神さあに化粧を施して、酒や食事を楽しんだ。

(著…宮田珠己『ニッポン脱力神さま図鑑』P25から引用)


 という素敵な存在らしいですね。

 今度田の神さあに巡り会ったら、改めて「こんにちは」と挨拶してみたいです。

 また、津軽の「鬼コ」にも惹かれます。

 ちょこんとしゃがんでいるかのような可愛らしさや、カラフルさや、ポーズや表情に、えも言われぬおかしみがあって、なんだか気になる存在。

 鬼が村を守ってくれたという伝承もあるそうなので、ますます興味を引かれます。




 〈こういう方におすすめ〉
 地域住民たちに愛される、ごく身近な神さまたちに関心がある方。

 〈読書所要時間の目安〉
 1時間くらい。

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