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著…横溝正史『金田一耕助ファイル4 悪魔が来りて笛を吹く』

 ※注
 結末や犯人の正体までは明かしませんが、犯人に関して一部ネタバレがあります。

 この小説に登場するのは元華族たち。

 今時の言葉で言えばいわゆる「上級国民」とされる人たちです。

 しかし、登場人物たちの中にはまともな神経を持つ人たちもいますが、中には下劣極まりない人たちもいます。

 元子爵だとか元伯爵だとか、そういう肩書きは所詮単なる肩書きに過ぎず、人格を語る上では何の意味も成さないことが、この小説を読むとよく分かります。

 世間の人たちから「〜様」と上品な敬称を付けて呼ばれていても、中身はそれに相応しくないことだってあるのです。

 それに比べて、この小説に出てくる連続殺人事件の犯人はというと、彼らとは全く違います。

 犯人は多くの人々から「悪魔」と呼ばれて恐れられるけれど…。

 そんな風に悪く呼ばれるには、あまりにも悲し過ぎる境遇の持ち主。

 この犯人は生まれた瞬間から、親たちが犯した罪を背負わされてしまいました。

 そしてそのせいで愛する人を亡くしてしまいました…。

 親たちがどんなに身勝手であったとしても、生まれる子どもには何の罪も無いはずなのに…。

 わたしはこの小説を読む度、犯人に同情します。

 この犯人を「悪魔」にしてしまった親たちの方がよっぽど悪魔じゃないか…と。

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