著…原田ひ香『喫茶おじさん』
ひとりで純喫茶を巡るのが趣味だという方におすすめしたい小説。
⭐️Kindle版
⭐️単行本版
※注意
以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。
この小説の主人公は、松尾純一郎という名前の57歳男性。
自分では男前なつもりでいるけれど、本当のところはどうか分かりません。
馴染みになろうとしていた喫茶店で、コーヒーのうんちくを知ったかぶりして、恥をかきました。
娘から「お父さんって、本当になにもわかってない」と言われ、妻も冷たく、家庭内に居場所がありません。
ただいま無職で、再就職活動中。
そんな彼の趣味は、都内の純喫茶めぐり。
どんなに世間の冷たい風が心に吹き込んできていても、美味しいコーヒーをすすり、ふわりと優しいサンドイッチを食べれば、ほっと人心地つけるのです。
クリームソーダも注文して、その爽やかさをじっくり堪能します。
わたしはこの小説を読みながら、彼と共に人生とコーヒーのほろ苦さや酸味を味わった気分になりました。
生きていると本当に色んなことがありますよね…。
また、わたしは、
という彼のモノローグに共感しました。
これって、純喫茶に限らず、どの飲食店にも言えることですよね。
店員さんが接客マニュアル通りに「ごゆっくり」と機械的に言っているだけで、実際には「ごゆっくり」なんて微塵も思っていないことがあからさまに伝わってくるお店の多いこと多いこと。
回転率を考えたら、ごゆっくりなんてされたらたまったものじゃないのはお客の側も重々承知なので、急かされたとしても別になんとも思わないのですが。
だからこそ、ゆったりとした時間の流れるお店に出会うと驚きますよね。
勿論、お店に閑古鳥が鳴いているというわけではなく。
人気店なのに、本当に「ごゆっくり」ともてなされている感じを味わえる。
そんなお店が、世の中にはごく稀に存在します。
そういうお店が近所にあると最高ですよね。
〈こういう方におすすめ〉
ひとりで喫茶店めぐりをするのが趣味の方。
〈読書所要時間の目安〉
3時間くらい。