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書き出し

 私のX(旧Twitter)の投稿をチェックしている方はお気づきかと思うが、2025年1月1日から、ある定期投稿をスタートさせた。

【本日の書き出し】

 内容は文字通り、一日一節、小説の書き出しを紹介するものである。
 あたかも数年間やってきたような体で、しれっと定期投稿を始めたこともあり、何ら動機が説明できていない。
 どれくらいの人に関心を持ってもらえるかは分からないが、今回は【本日の書き出し】を始めた経緯を綴っていきたいと思う。

 定期投稿を始めようと思ったきっかけは、主に二つある。

 実は「書き出し」に注目し、意識して記録するようになったのは2020年の始め頃で、それから数年間、コツコツと収集を続けてきた。 
 記録先はスマホのメモアプリなのだが、これがなかなかリスキーで、ちょっとした動作ミスで、記録をすべて消してしまうということが偶に起こる。
 ある程度メモが溜まってきた段階で、これはそろそろ別の媒体に移していかないといけないなと考え始めた。そこで浮かんだのが、SNSでの投稿である。一人でメモを眺めながらニヤニヤしているだけでは勿体ないので、投稿を通して多くの人と「書き出し」を共有しよう、との結論にいたった。

 もう一つのきっかけは、昨年末に読んだ一冊の本。「書き出し」について書かれた一章があり、大変知的好奇心を擽られた。

「スナイパーのようにして見つけ出した書き出しは、まるで機関車のごとく、残りのすべての文章を自ら引き連れていくのです。そしてもし書き出しがうまくいったら、それから先はもっと楽に行くでしょう。やがてその先、書き始めたこの文章は、あなたのためによく働き、物語全体の調子を整えることになるでしょう。」
イーゴリ・レイフ著、広瀬信雄訳『作家の文章はなぜ人の心に響くのか』明石書店、P161)

 優れた「書き出し」が書き手に与える恵みには、読み手とも共有できる部分がある。
 小説世界の散策がいかに楽しいといっても、そこではそれなりの体力が要求される。物語の設定、世界観、登場人物、その人間関係……把握しなければならない要素が次々と押し寄せてくる。これを整理するだけでも、なかなか骨が折れる作業だ。
 特に負荷がかかるのは、物語の全貌がまったく把握できていない小説の冒頭部分になるわけだが、ここを滑らかにして、できる限り読者に負担を感じさせないようにする。その機能を、優れた「書き出し」は担っていると言える。

 なぜX(旧Twitter)で定期投稿を始めたか。そのきっかけをざっくりと纏めてみた。少しでも興味を持たれた方は、ぜひ【本日の書き出し】をチェックしてみてください。




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