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Amazonには、商品を五段階(星1〜5)で評価できる機能がある。
私の変わった趣味として、発売日直後に星1がつけられている書籍を見かけると、どうしても買わずにはいられなくなる。「星1であれば、気絶するぐらいひどい内容にちがいない!」という好奇心に、打ち勝つことができない。
先日も、芳ばしい星1レビューを発見した。対象書籍は、『いいね! ボタンを押す前に』(亜紀書房)。星評価だけでなく、文字のレビューもあったので、以下に引用しておこう(2023年1月29日確認)。
バッサリである。書籍の発売日は1月25日であるから、よほど期待して、むしゃぶりつくように読んだにちがいない。そうしたら、拒絶された……。
これは期待できる。入手して、読んでみることに決めた。
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読みながら確認したいことは、各論稿の内容が「いちいち稚拙」で「独善的」かどうか。本当にその通りなら、私も読みながら白目を剥くだろう。
一つ目の論稿は、本書の序論にあたる、小島慶子の「私たちはデジタル原始人」だ。さっそく読んでみる。
私の能力が低いからか、「稚拙」で「独善的」な文章には見えない。むしろ、的確な文明評である、と私には思える。
インターネットもSNSも、使うのが当たり前の日々を送っているから、つい忘れがちだが、どれだけ熟練した(?)ユーザーであっても、長くて20〜30年しか、その環境に身を置いていない。人類史視点で考えてみれば、人類はまだインターネット・SNSの使い方を模索する段階にあると言える。章題の「デジタル原始人」という言葉は、そのことをコンパクトに表現している。
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小島のこの文章は、本書の各論稿を貫く一本の指針を示している。「インターネットもSNSも問題だらけだから、使わなければいい」と言っていられる段階に、今の社会はない。それよりも、日常生活に根付いたインターネットやSNSを、どう実りあるツールに変えていくか。その問題提起が、本書ではなされている。
例として、田中東子の論稿「なぜSNSでは冷静に対話できないのか」から文章を引いてみた。
誰に頼まれるでもなく、次々とSNS上に放たれていく発言には、その量からして、いちいち真偽を確かめる時間が与えられていない。その結果、多くの一般ユーザーは、「いいね」や「リツイート」「コメント」の数から、内容が信用に値するかを判断するようになる。
数を集めたければ、他の人と同じような発言をするわけにはいかない。平凡な内容では、埋もれてしまう。そういう心理から、発言が過激化していく。過激化にともない、その支持者も数を増し、発言を訂正することがますます困難になる。
ユーザーはみな対等である以上、この事態の改善は、プラットフォーム側に一番の責任がある。この点についても、本稿は解説を行なっている。
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『いいね! ボタンを押す前に』を通読してみたが、結局、本書のどの点が「稚拙」で「独善的」なのか、最後まで分からなかった。
レビューで、星1をつけようが、星5をつけようが、個人の勝手である。ただ明らかなのは、本書の論評を2行で行うのは無理がある、ということだ。
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