苦悩
作家の有吉佐和子は、エッセイ「不要能力の退化」の中で、次のようなことを書いている。
この文章を読んで真っ先に思ったことは、もし有吉が今現役の作家であったとしたら、さぞ苦労することになっただろう、ということだ。彼女の「しないこと」リストに、あと最低五、六個は項目が増えることになっただろう。
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現役の作家が、作品を発表すること以外で「するのが当然」とみなされていることに、「SNSでの発信」をあげることができる。
その作家が余程大家でない限り、「SNSでの発信」を拒むのは難しく、作品の宣伝も兼ねて、定期的な投稿が求められる。
この作業が、数をこなすほど、本の売り上げの向上につながるような、プラスの面しか持ち合わせていないのであれば、まだ我慢のしがいがある。だが実際は、売り上げ向上どころか、投稿が問題視され騒ぎになり、逆に読者を遠のかせるリスクさえある。読者の心は移ろいやすい。
私個人としては、作家の投稿を定期的にチェックできるというのは、シンプルにありがたい。ただ、そこでチェックできる内容を、どのくらい読む本の選択に反映させていくか、というのは悩み所だ。
書店でのたまたまの出会いを大切にしたいと思う自分と、差別的・排外的な発言をする著者の本は避けたいと思う自分と。後者を徹底しようとすれば、SNSだけでなく、作家が出演したメディアを総ざらいしなくてはならなくなる。残念ながら、そんな時間はない。せめてSNSの投稿ぐらいはサッと目を通しておきたいとは思っているが、私自身充分に実行できているとはいえない。
こんなことばかり書き続けていたら、背後から「これだから……」と有吉が嘆息する声が聞こえてきそうだ。
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