敬愛
会って話す場所として、いつも指定してくるほど、ミスタードーナツが好きな友人の家を、先日訪ねた。
手土産に、クリーム系のドーナツを四つほど買い、持っていく。期待通り、友人は喜んでくれて、「いっしょにたべよう」とコーヒーをいれてくれた。
本好きの習性として、訪ねた場所に本棚があると、ついつい物色してしまう。
友人の家に来るのは久々だったため、一言断りをいれてから、本棚を見せてもらった。
社会科学系の本が多い棚の中にあって、一冊美術系の本を見つける。タイトルは『ぼくの美術帖』。版元は、みすず書房。著者名は「原田治」とある。
私はこの著者のことを知らなかったので、友人に「この本の"原田治"ってどんな人?」と訊ねた。
簡単な説明が返ってくるかなと思いきや、友人は熱く語り出した。それもそのはず、この"原田治"は、友人の愛する"ミスタードーナツ"と深いつながりがあった。
原田治は、キャラクターグッズ「OSAMU GOODS」で人気を博したイラストレーターで、1980年中頃から2000年代初頭にかけて、ミスタードーナツのイラストを担当した。イラストを見せてもらうと、我が家にもこのイラストが付されたバッグがあることに気づく。見慣れたイラストでありながら、私はその作者を知らなかったのだ。恥ずかしい。
一冊の本から、友人のミスタードーナツ愛の深さを知って、感動する。原田治の美術観に興味が湧いたので、友人に本を貸してもらうことになった。
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この感覚は、美術以外の分野でも言える。
自分としては、てんでばらばらの作家たちを好きになっていると思っていたら、作家同士には影響関係があり、それを公言していたりする。私の好きな作家に、共通して流れる要素とは何だろう、と考えてみることは、知的好奇心が擽ぐられ、大変面白い。
俵屋宗達の絵、木村荘八・鈴木信太郎らの挿絵、アーニー・ブッシュミラーの漫画『ナンシー』など、様々な作品との「邂逅」を通して、原田治の美術観は形作られていった。その遍歴を追える本書は、読者に新しい美術との「邂逅」の場を提供する。
制作年代の古さに関係なく、初めて対面する作品には新しい発見がある。これは、どのような作品と向き合うときにも、心に留めておきたい視点である。
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