社会学者・中井治郎さんが見つめる観光都市「京都」の今昔|「そうだ 京都、行こう。」の30年
【ポスター ’96 冬】
【ポスター ’05 春】
【ポスター ’12 夏】
京都の歴史を、観光都市の側面から振り返ると、この街が初めて「伝統」を意識したのは、「都」を江戸に譲った時だったのではないかと思います。政の中心を江戸、商の中心を大坂が担う中、京都が拠り所にしたのは天皇を擁していること、すなわち「伝統」でした。よそから訪れる人に向け、いかにこの伝統をプレゼンしていくかを考える過程で、京都の観光文化は洗練されていったのでしょう。
明治の時代になり、天皇も京都を去ると、京都は一度、自らのアイデンティティーに迷います。ここで登場したのが、「京都策」と呼ばれる近代都市化の試みです。1871(明治4)年の京都博覧会で日本初といわれるインバウンド誘致がなされ、また大学が作られました。レンガ造りの近代建築が多く残っているのは、その当時の名残です。寺社の街になぜあの京都タワーが、と訝る人も少なくないかもしれませんが、時代の先端を担う京都において、タワーの建設は不自然なものではなかったのです。伝統と歴史、ハイカラかつ最先端という2層のアイデンティティーを持った京都には、多くの修学旅行生が訪れるようになります。
その後、産業の流出や全国の他の都市の隆盛などにより、「都市」としての魅力に陰りが出てくると、いよいよ「古都」の要素が前面に押し出されます。これが、高度経済成長期以降、今に連なる京都の姿です。自分たちの歴史や文化、伝統を、身銭を切ってでも残す。こうした共通の気概を持つ京都の人々によって、京都は「古都」であり続けています。
ただ、その「古都」も時代によって見え方が変わります。それは京都自体の変化というより、世の中の変化によるもの。観光地というものは、旅人が欲するものを映す鏡のような存在だからです。では、時代は一体「古都」に何を求めてきたのか。「そうだ 京都、行こう。」のCMとともに、その変遷をたどることにしましょう。
談=中井治郎 構成=佐藤淳子
──この続きは、本誌でお読みになれます。本誌では社会学者の中井さんが「そうだ 京都、行こう。」キャンペーンのTVCMのナレーションや、ポスター画像とともに時代を振り返ります。こちらでは、ポスター画像を一部抜粋してご紹介しますので、ぜひお楽しみください。
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出典:ひととき2024年3月号
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