【地理系ブックカフェ空想地図】いざ、地理好きの集う聖地へ(世田谷区駒沢)|本の棲むところ(6)
地図の日である4月19日*、世田谷区駒沢にある地理系ブックカフェ空想地図さんを訪ねました。
東急田園都市線の駒沢大学駅から地上に出て、玉川通りを西に向かって右折、静かな住宅街をすこし歩くと左手に大きな幟とオレンジ色のタペストリーが現れます。
地理にまつわる本が読み放題
店内の本棚には1200冊以上の地理に関連する書籍が並べられ、カフェを利用している間はそれらが読み放題となります。
カフェのメニューには「クリーム地〜図スパゲッティ」や「地〜図サンド」など、遊び心を感じさせる名前がずらりと並んでいます。
もちもちのパスタと生ハムに濃厚なチーズが絡んだ本格的なスパゲティはボリュームもたっぷり。いちごが添えられたチーズケーキも甘味と酸味のバランスがほどよく絶品です。
本棚には地図やガイドブックを中心に、地理にまつわる学術書やトリビアをまとめた本なども置かれています。地理がそれほど好きでなくても、旅行や街歩きが好きな人ならきっと楽しめるはず。
「空想地図」という店名の由来
地理に関する本が充実していることはわかったものの、なぜ店名が「空想地図」なのか。その理由を店主の田中利直さんに尋ねました。
「子どもの頃、“空想地図”を描くのが好きだったんです」
そう言いながら指差した先には、壁に貼られた大きな一枚の地図。田中さんが中学生の頃に描いた「架空の都市」だと言います。
てっきり既製品の地図かと思っていましたが、近くで見るとたしかに手書きで描かれています。あまりの緻密さに、思わず息を呑みました。
「6年前、娘がこの地図をTwitterに上げたところバズりまして、テレビなどにも紹介されました。そのときの絡みで地図会社さんとのご縁が生まれ、店を立ち上げるときもいろいろと応援していただきました」
セブン&アイグループ傘下のレストランで店長を務めていた田中さんが早期退職を希望し、奥様と二人でこのブックカフェを始めたのは昨年9月。
当初はお二人の出身地である静岡県内に出店することも検討したものの、地理に特化したニッチなブックカフェならば都内のほうが人が集まるだろうと考えたそうです。
駒沢大学駅を選んだのは「たまたまよい物件に出会えたから」でしたが、お店を始めてみると意外な偶然に気づきます。
「駒沢大学には地理学科があり、2駅となりの池尻大橋には日本地図センターがあるんです。地理に関わっている方が多い場所なんだとわかりました」
カフェにはそうした関係者だけでなく、田中さんと同じように空想地図を楽しむ方も訪れると言います。
この日、たまたま来店していたのは空想地図作者などが集まるイベント「空想地図学会」を主催する加藤太一さん。校了したばかりのZINE『空想と地図』の創刊号のゲラを見せていただくと、表紙を飾っているのはなんと店主の田中さんでした。
地理に関するイベントも
すでにさまざまな地理ファンから注目を浴びている田中さんに、これからのお店の展開について伺いました。
「地理に関連するイベントなども企画していきたいと思っています。5月27日には、“県境”をテーマにした著書を持つ西村まさゆきさんと田仕雅淑さんのトークイベントを行います」
開業から半年余りで、すでに地理好きたちの聖地と化した感もある「地理系ブックカフェ空想地図」。田中さんの空想から生まれた夢は、これからどんな未来を歩んでいくのでしょうか。とても楽しみです。
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最後に、田中さんが旅好きな人におすすめする一冊をご紹介します。
「冒険家の国」「神と戦う人」「ライオンの町」……さまざまな国の由来を知れば、なかなか覚えられない国名も自然と頭に入るかもしれません。小さなお子さんからオトナまで、年齢を問わず楽しめる絵本です。
文・写真=飯尾佳央
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