若冲と並ぶ“奇想の絵師”芦雪が南紀に残したもの(和歌山県串本町)
串本で芦雪に出会う
無量寺境内にある「串本応挙芦雪館」には、別記事でご紹介した虎と龍の襖絵のほかにも芦雪作品を14点、常設展示しています。その中から厳選して3作品をご紹介いたします。
串本応挙芦雪館
芦雪の襖絵をはじめ、「寺宝を大切にしたい」という思いを共有する、地域の人々の支援のもと設立された。重要文化財の襖絵などを保管する収蔵庫と展示室(写真)がある
1.布袋・雀・犬図
3幅でひとつの場面を描く。中幅は、大きな袋の上に座る布袋が唐人人形を操っている。右幅には、袋からこぼれ出た木の実をついばむ雀と地上へ舞い降りようとしている雀。左幅には、3匹の子犬が重なるように戯れる。このうち斜め上を向く白い子犬は、中幅の布袋が操る人形を見つめている。印から、南紀滞在以前に無量寺へ送られた可能性も考えられる 1786〜87(天明6〜7)年 各99×34.4センチ 串本町蔵、串本応挙芦雪館保管
2.牡丹雀図
写実にすぐれた中国花鳥画の影響が見られる。紅白の鮮やかな牡丹、3羽の雀、岩を精緻に描写。大胆奇抜な作品で知られる芦雪だが、綿密な計算と高度なテクニックを駆使して描いている。性格的にも奔放で数々のエピソードを残すが、先人から熱心に学ぶ姿勢や鋭い自然観察眼を持っていることがよく分かる。しばしば描いた雀の姿も愛らしく、生き物に対する慈愛が感じられる 1786〜87(天明6〜7)年 132×54センチ 無量寺蔵
3.薔薇図
L字形に配されている襖絵。角の部分に位置する中央の襖2面に、奇異な形の岩を描くことで、より立体的に見せている。岩から伸びる薔薇の枝はしなやかで力強い。岩の左には雌雄の鶏がいて、鶏冠〈とさか〉の朱がとくに目を引く。右には3匹の猫。このうち1匹は水中の魚を狙う瞬間を描いている 1786(天明6)年 襖・計8面 右4面/各179.3×91.5センチ、左4面/各183.5×115.5センチ 無量寺蔵
写真(作品除く)=阿部吉泰
──本誌では、芦雪の南紀での足跡を辿りながら、なぜこの地で芦雪の才能が花開いたのか、その理由と人物像に迫ります。南紀に残された、力強い中にもどこか愛嬌のある芦雪の絵画も数多く掲載されていますので、ぜひご一読ください!
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