「ケスキリア、ケスキリア」
「ケスキリア、ケスキリア」
パリの高級アパルトマンに暮らす
年老いた音楽家のジョルジュとアンヌ。
穏やかな夫婦の暮らしが突然一変する。
妻のアンヌが病魔に襲われたのだ。
「ケスキリア、ケスキリア」
ジョルジュが何を尋ねても答えない。
何分間かアンヌは完全に記憶を失う。
「どうしたの、どうしたの」
頸動脈が梗塞を起こしたのだ。
ジョルジュは「男と女」の名優、
ジャン=ルイ・トランティニャン、
アンヌは「24時間の情事」の
エマニュエル・リヴァが演じる。
いぶし銀のような胸迫る演技。
この映画「愛、アムール」の
監督/脚本は「ピアニスト」でも
評価を得たミヒャエル・ハネケ。
老夫婦の哀しく切なく辛い
人生の終焉を丹念に描いていく。
手術が失敗して動けなくなった
妻を介護する夫の日常は献身的。
妻は日々衰弱して記憶が混乱する。
肉体も精神も疲弊していく夫。
最後に訪れる悲劇は究極の愛だ。
「ケスキリア、ケスキリア」
妻を見つけて問いかける夫。
その静かな驚きの声が耳に残る。
決して映画だけの世界ではない。
やがて僕らにも訪れる出来事なのだ。