病院の河津桜
僕が入院し今も通院している病院には
2棟の間に一本の河津桜の樹がある。
まだ寒い2月だというのに咲き始めた。
赤紫のシックな色の大きな一重の花が、
上の方からやさしい眼差しを向けている。
河津桜は大島桜と寒緋桜の自然交雑で
新しく誕生した日本原産の桜である。
大島桜の大輪と寒緋桜の赤紫色を持つ、
冬の時期から花が咲く嬉しい桜である。
静岡県河津町で1995年に原木が発見された。
河津桜の原木を発見したのは飯田勝美さん。
庭に植えて開花したのはその11年後。
飯田さんの屋号から「小峰桜」と言ったが、
1974年にカワヅザクラと命名されえ町の樹に。
いまでは河津桜並木が3kmも続く観光名所だ。
河津桜の早咲きが尊ばれて全国で栽培され、
東京の公園などでも見かけることが多い。
ぼくが散歩する江古田の森公園にもあるが、
病院の河津桜への想いは僕にはとても強い。
河津桜が僕の命を救ってくれた気がするのだ。
大きな病院にある河津桜がたった一本だからか。
病院の角地で患者たちを見守っているような、
健気で優しく奥ゆかしい河津桜なのである。
今週もまたこの病院でいつもの定期検診がある。
河津桜を眺めながら病院の入り口をくぐるのだ。