大好きな曲を、大好きな音色で聴く幸せ___閑崎ひで佳×髙橋望「ピアノと舞の出会い」_2022年11月15日
”着物の日”である11月15日、地唄舞師範の閑崎ひで佳さんと、ピアニストの髙橋望さんによる「ピアノと舞の出会い~着物で舞うクラシック音楽の試み」に行ってきました。
曲目は、 ラヴェルの「亡き王女のパヴァーヌ」、ドビュッシー の「アラベスク第1番」と「月の光」。
--大好きな曲を、大好きな音色で聴く。
文字にするとたったこれだけ。けれどその体験はこんなにも魂を深く癒すのかと、しみじみ感動しました。
曲によってアルペジオ(和音をバラバラにして順に弾く)が桜の花びらに見えたり、落ち葉に見えたり、金箔の雪に見えたり。自分の語彙の少なさに危機感を覚えるほど、「美しい」としか言葉にならず、幸福の中でただ涙がとめどなく流れていました。
髙橋さんはJ.S.バッハのゴルトベルク変奏曲をライフワークとしていることから、勝手に「ドビュッシー の演奏はレアだ!」と思い込んでいたのですが、ドレスデン・カール・マリア・フォン・ウェーバー音楽大学を卒業する際、課題曲として「師匠(ペーター・レーゼル氏)にドビュッシーとシューベルトを弾くように言われた」とのこと。演奏家資格試験を最優秀の成績で修了していらっしゃいました。
伝統芸能の「地唄舞」については恥ずかしながら初めて知ったのですが、江戸時代後期に上方で発祥した舞とのことです。
アフタートークで伺った閑崎さんの解説によると、「地唄舞の心」として、「昔の恋や思い出を振り返る」心象風景を表現した舞が多いそう。今回のクラシック3曲に振付をする際には、「地唄舞にはステップが無いので、扇子を広げることで、思い出の巻物を広げるイメージ」を表現し「扇子を回す」ことでステップの代わりにしたと言います。すり足や踏みしめる動作が中心となるため、選曲も難しいものだったそうです。
今回の選曲について、髙橋さんは「異文化を取り入れて発展させた」という点で、今回の共演と「ラヴェルやドビュッシーとは通じるものがある」と言っていました。
19世紀(フランス印象主義)の作曲家は、それ以前に名作曲家が多く、”出尽した感”がある中で迷っていたといえる。彼らは、異文化を取り入れたことで、音楽の発展に寄与したのだそう。
ほかにも、「J.S.バッハの曲にもアラベスク模様のところがたくさんある」というドビュッシーの言葉を挙げながら『主よ人の望みの喜びよ』の一節を弾いてくださったり、エドガー・アラン・ポーの『アッシャー家の崩壊』に登場する「グロテスク・アラベスク」にまつわる音楽のエピソードを聞けたりと、後半のアフタートークも大変面白い時間でした!
私の人生に音楽があることを、心から感謝します。