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ルチャ・リブロを読みなおす

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人文系私設図書館「ルチャ・リブロ」から生み出される一連の著作を、生活の中で時間をかけて、ゆっくりと読みなおす試みです。
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記事一覧

読書記録|手づくりのアジール(青木真兵 著)⑩

読書記録|手づくりのアジール(青木真兵 著)⑩

  一昨日から昨日にかけて、下記のトークイベントを視聴していた。

 この中で、リゾート的な場所や時間、余裕があるときにしか「考えること」ができないという話や、人は何らかの失敗をしたとき「心」が発生するのではないかという話があった。
 研究でいえば、本を読んだり論文を書く時間が「研究の時間」で、それ以外は、そのための時間を確保する労働の時間と一般的には考えられていると言える。青木真兵さんは、オムラ

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読書記録|手づくりのアジール(青木真兵 著)⑨

  読書記録|手づくりのアジール(青木真兵 著)⑧ 

 『手づくりのアジール』の中では、「逃げる」ことの(限りなく比較不可能な)価値が、幾度となく対話を通して言語化されている。そして、「逃げる」ことで「拠点」ができるという逆説的な道筋も、青木さんの実践と理論の折り重なったところに記されている。

 「対話3 『スマート』と闘う 藤原辰史×青木真兵 (P111-132)」の中で、「絶対に譲れない何

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読書記録|手づくりのアジール(青木真兵 著)⑧

読書記録|手づくりのアジール(青木真兵 著)⑧

読書記録|手づくりのアジール(青木真兵 著)⑦

 先日、私が田中君に送った折坂悠太さんの新作アルバム「呪文」。上記の読書記録⑦では、その呪文が話題の中心になっていた。

 そこには、田中君が自宅近くで「貸し本棚オーナー募集」に”直感的”に申し込んだことが記されていた。その田中君的私設図書館のイメージとして、折坂さんのインタビューが引用されていた。

 このインタビュー記事を踏まえて、田中君はこう

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【読書記録】「手づくりのアジール(青木真兵 著)」⑤

【読書記録】「手づくりのアジール(青木真兵 著)」⑤

【読書記録】「手づくりのアジール(青木真兵 著)」④

 1993年に放映されたテレビドラマ「あすなろ白書」。私は、熊本県益城町広崎の実家の居間で一人観ていた。数年前までは、東京の多摩ニュータウンに住んでいて、いきなり「田舎」に住むことになった。夏休みになると、飛行機で東京に行って、その話をするとクラスで一躍ヒーローに慣れた。

 「homeport(母港/港)」の原点は、間違いなく「あすなろ白書

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【読書記録】「手づくりのアジール(青木真兵 著)」③

【読書記録】「手づくりのアジール(青木真兵 著)」③

【読書記録】「手づくりのアジール(青木真兵 著)」②

 「対話1 逃げ延びるという選択」では、アジールとしての大学が語られている。アジールとしての意味を内包していた大学が、産業化・会社化していく中で、近年始まった「ホームカミングデー」。それは、アジール性を体現していた大学人を無意識的に排除することにも繋がりがねない。
 
 私の大学院のホームカミングデーでも、毎年卒業生が講演を行うが、社会的にあ

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流れの中にいると安定する


第1回の読書会を終えて、自分が力を発揮できる「環境」とは何か。そのことをずっと考えている。これはおそらく、読書会のパートナーである田中伸之輔くんの専門である心理学的な問題でもあるし、彼と出会ったきっかけになった「研究的実践を組みなおす」と題したZINEの中のテーマでもある。

私が大学院時代、ローカルフェス主催者(organizer)研究を通して、辿り着いたキーワードが河野哲也さんの「社会的アフ
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【読書記録】「手づくりのアジール(青木真兵 著)」②

【読書記録】「手づくりのアジール(青木真兵 著)」②

 【読書記録】「手づくりのアジール(青木真兵 著)」①

 このマガジンは「ルチャ・リブロを読み直す」と題した読書会の記録と記憶を残す場所である。「ルチャ・リブロ」とは青木真兵さんと青海子さんが営んでいる奈良県東吉野村の人文系私設図書館ことである(青木さんのXの名前は「青木真兵/ルチャ・リブロ」となっており、自分自身が「ルチャ・リブロ」であり、「ルチャ・リブロ」が青木さんでもあるのかもしれない)。

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