和歌で子どもの心をつかむ

1 はじめに



和歌の指導は,詩歌と同様に興味がわかれやすい分野であります。
中学校で本格的に扱われますが,ここで苦手意識を持ってしまうと古典嫌いになりかねません。
高校への接続の観点から望ましくないでしょう。

和歌は限られた文字数で情景や心情を描写されます。
この制限された中で表現することや解釈することの難しさは俳句で感じる子どもも多いです。
俳句ですら困難さを感じている子どもが,今度は文語で語られたときには白目をむくか机に突っ伏すのも無理はないでしょう。

なんとか興味の持てる授業を構想して,古典嫌いから古典は読み物として楽しい,国語が好きだという生徒を育みたいですね。



2 知識を教える



楽しい活動や,わくわくする授業にしたいですが,基礎的な知識のないままでは活動あって学びなしの状態に陥りかねません。
知識はやっぱり教え込みの要素が多いです。
理解するべき所は教え込んで,その上で興味の持てる活動を考えましょう。

区切れ,枕詞,序詞、掛詞、縁語,体言止め,本歌取り・・・・・・

和歌の知識は挙げればきりが無いですが,ストーリーの中でどのような和歌がどのような工夫で表現されているのかを見ていくのは1つの手です。
和歌だけを単体で見ると,短い文字数で伝えたいことを伝えているので背景や想いが見えづらいです。
それをストーリーの中で使われる和歌を例として見ることで背景や心情にぐっと迫りやすくなります。
同時に古典作品の魅力を子どもが感じることができれば最高ですね。


3 古典作品の中の和歌を詠む



先生が好きな古典作品を実際に一緒に読んでみるというのは,古典作品を魅力的に語るにも適しているし,和歌の知識の教授にもつながります。

「枕詞って必要なのか。基本的に訳さないのが原則なら,想いを伝えるためには文字数を有効活用したらいいのにと思った」

という振り返りを書いている生徒がかつていました。
おもしろいですね。
学習したことを自分の感覚で捉えて感じたことを言語化していますね。
これを学習の導入に使わない手はありません。
振り返りシートの有効的な活用方法については,以前まとめた記事を見ていただけたらと思います。

さっそく授業で枕詞が使われた和歌を使用した作品を紹介しました。
質問した生徒はもちろん,多くの生徒が当時の恋愛観や行動に驚きや関心をつぶやいていました。
反応があると教師冥利に尽きますね。

以前紹介した作品は『伊勢物語』の梓弓の段が個人的に大好きなので,そこを紹介したときは感嘆の声から男を憎む声までさまざまで大変盛り上がりました。


あづさ弓ま弓つき弓年を経てわがせしがごとうるはしみせよ


この和歌は特に肯定的な感想と否定的な感想が両極端で盛り上がるところですね。
話の流れを簡単に説明すると,

出稼ぎに行った旦那を待っていた。
旦那を待っていた女は,熱心に言い寄ってきていた男と「今夜結婚しましょう」と約束をした。(当時は,3年待って戻ってこなければ別の人と結婚することが許されていた)
しかし,待ちわびていた旦那が戻ってきた。
旦那は戸を開けてほしいとお願いしたが
「今夜,私は別の男と結婚するのです」
と歌を詠んで応じなかった。
そこで男は

「あづさ弓ま弓つき弓年を経てわがせしがごとうるはしみせよ
(私があなたのことを長い間愛したように,あなたも新しい夫を愛おしみなさいよ)」

といって去って行くのです。
女は旦那を追いかけるが時すでに遅し。
最悪な結末を迎えることとなります。

古典の日などにおもしろい読み物として紹介する引き出しにもなります。
古典にも日常的に触れていきたいですね。



4 こどもは恋に敏感



中学生ぐらいになると,恋愛にかなり興味を持ちます。
このようなテーマについて取り上げる場合には十分な配慮が必要ですが,生徒の様子を見ながら興味を持てそうなテーマで掘り下げていきましょう。

例えば,百人一首で和歌を学ぶ場合,単元や本字の目標にも取りますが,
興味を持って親しませるには
恋愛の歌に絞って比較,検討する時間が合っても良いでしょう。

これらの作品の中で,

恋を歌っているのはどれ?
この3つの和歌の中で,一番恋愛感情が上手に表現されている?

などと問いかけるのはおもしろい視点です。
恋を歌っているということを見抜くためには和歌の中身や心情を想像しなければなりません。
作者について調べる生徒も出てくるかも知れません。
和歌を比較する作業も必要になります。

多くの学習に必要な力を総動員して,自分なりの考えをまとめます。
一生懸命にらめっこして読み取れたときの爽快感や,友達との関わりの中でえられた新たな視点は子どもの関心を駆り立てます。
なにより,恋というテーマであれば真剣に取り組める生徒がいるというのもおもしろいですね。



5 おわりに



和歌は楽しいです。
先生が興味を持って楽しい表情で興味深い作品にも触れさせてやると,和歌や古典が好きになる生徒が出てくるかも知れません。
楽しく勉強できると良いですよね。

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