ウイスキーソーダと落花生
行きつけのショットバーでは、いつも一杯目に頼むウイスキーソーダと一緒に落花生を出してくれる。
この組み合わせは、二十年来変わらない。
通い始めて一年を過ぎた頃、なぜ落花生なのか初老のマスターに尋ねてみた。
これが一番合うから、が答えだった。
それだけですか、と重ねて尋ねた。
落花生の花言葉を知っているかと、逆に聞かれた。
返答に窮していると、調べてみる価値はあるよと、言われた。
次に訪れた時、いつものようにウイスキーソーダを頼んだ。
アテは何にするか、と初めて聞かれた。
『落花生』をお願いします、と答えた。
他にも色々あるよ、と悪戯っぽく聞かれた。
いや、一番おいしいし、それに…。
少し間をおいて、『仲良し』だから、と答えた。
マスターは微笑みながら、落花生を出してくれた。
彼は三年前、天に召された。バーカウンターの片隅には、彼が愛用していたシェーカーと一緒に落花生を入れた小皿がいつも仲良く置かれている。
<了>