ハイサイおじさんが歌えない。
(戦争、殺人事件、暴力、精神疾患に関する記事です。読めそうになかったらお戻りくださいね。ですます調とである調が混ざってます。あえて整えず、まんま出しました)
最近、完全沈没してしまって大人しくしていた私ですが…。
ちょっと歌ったのを機に(歌ったのは長渕剛と沖縄風サザエさんだけど…)
『沖縄風アレンジの邦楽じゃなくて、本当の沖縄の歌も覚えて歌ってみよう』
気持ちが明るくなれるんじゃないかとチャレンジしてみました。
曲目は『ハイサイおじさん』。
おじさんの声と高い女の声のどちらも出せる私には相応しい課題曲だと思った。
最初はメロディーを覚えるためにひたすら聴き流し、鼻歌で追いかける。
歌詞はわからない。
だから、歌詞をノートに書き写してみる。
やっぱり何語かな?ってくらいわからない。
漢字も本土とは読み方が違う。
聴こえてくる発音と重ならないのだ。
お手上げになった私は『訳』を求めた。
これは酒飲みのおじさんを子供がからかっている曲である。
曲調は明るいが、歌詞の内容はなかなかに辛辣で、毒舌。
その上、このおじさんは精神を患って酒浸りになってしまっていたのだ。
おじさんのモデルは実在していました。
舞台は沖縄。
第二次世界大戦中の激しい沖縄戦で、
ある女性は心が狂ってしまい、娘を殺してしまいました。
書くのもためらう殺し方で。
その娘の遺体を父親である『おじさん』が見つけてしまい、おじさんも正気を失ってしまったのです。
そして、そんな酒浸りのおじさんに近所の子供がからかいの言葉をかけて、それにおじさんが応えている、そんな歌。
おじさんはハゲてるねー
とか、
おじさんのヒゲは変なヒゲだねー
とか。
おじさんの娘を僕のお嫁さんにちょうだいよー
とか、冷静に聴いていたらとんでもない歌詞でした。
明るくなりたくて挑戦した『ハイサイおじさん』だけど、背景を知ったら明るくなれなかった…
それでも、メロディーは果てしなく明るく、どんな苦しい状況でも生き抜いていこうとする当時の沖縄の人々の気概が感じられます。
作者にもきっと『負けないぞ!沖縄!』という気持ちがあったんじゃないかな…
いまは、正直、私メチャクチャショックで悲しいのだけど、歌えるようになるかなぁ…
一週間前かな?
たまたまいつもと違う時間にテレビをつけてしまいました。
ニュース番組でした。
イスラエルが戦争をしていたんですね。
本当にテレビを見ないので知りませんでした。
真っ暗な空に真っ赤な光の玉が…
私は戦地へ行ったことがないのに、
『やめてぇぇーっ!!』
耳をふさぎ、叫んでしまいました。
ーー家がなくなる!
家がなくなる!!
……お…お家がないの
わぁああっ!
ああぁあああっ!!
(お家が…お家が…)
子供たちの泣き声が頭の中に響きます
安全な場所で眠れない娘は…
食べ物もない娘は…
………………。
『いやぁぁあああっっ!!!』
こういった形でもフラッシュバックは起こるので、やっぱりテレビは迂闊につけられません。
ハイサイおじさん…
直訳で、『こんにちは、おじさん』。
ハイサイおじさん ハーイ
ハイサイおじさん アッヌッガ
ゆうびんさんごびんぐゎ ぬくとんな
ぬくとら わんに わきらんな
……おじさん。
おじさんはお酒飲むしかきっとなかったんだろうね。
…おじさん。
戦争なくならないよ。
戦争に見えない戦争もなくならないよ。
それでも、確かに現代にのこっている
『ハイサイおじさん』という歌。
人間の生命力そのものが、この明るいメロディーと辛辣な歌詞や暗い背景のギャップに詰まってる。
この『おじさん』になるつもりはないけれど、この『歌』のような諦め悪すぎる不屈の闘志的生命力は持っていたい。
でも、まだショックで歌えない…です。
……おじさん…。
…おじさん……。
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