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エッセイ 公園とうつろいのこと。


 朝にワンドリップを淹れたことと、糸島への道すがらに気づいたこと。

1.朝コーヒーの時間。



 リビングの隅で、電気ケトルがぼこぼこと元気よく音を立てはじめた。
 口から湯気を吐き、それが白む吐息ように見えた或る日の朝。

 私は素足でぺたぺたと、ケトルがあるダイニングの棚まで歩いて手に取る。
 側面を指の腹で触れれば、それはしっかり熱かった。

 沸かしたてのお湯をステンレスのコーヒーポットに移す。
 それで、お湯の温度がやや下がる。
 ほどよい熱さのお湯を作ってから、ポットの細い注ぎ口でゆっくり時間をかけてコーヒーを淹れたかった。

 今日は、近所で買った市販のワンドリップ。
 袋の端をまっすぐ破り、取り出したバッグの上の縁をキリトリ線に沿って破る。
 注げば湯気と一緒に香りが立ってくれる。

 余談だけど、珈琲の製品にあしらわれるフォントって、不思議と明朝体がしっくりくるよね。

 ちなみに、最近よく飲むのはこちら。
 おてがるで美味しい。

 いつもは豆を挽くとか、フレンチプレスで淹れるとか、そういうひとときの話が多いけれど、市販のワンドリップも普通に楽しんでいる。
 そして、朝珈琲を楽しんでから原稿をいくらか書き、午後は糸島の実家に帰ることにしていた。

2-a.昼下がりの道すがら。



 実家のすぐそばに、小さな頃よく遊んでいた公園がある。
 学校帰りや、土曜日の昼。友達と遊ぶ約束をすれば、集合場所はいつもその公園だった。

 他愛のない子供の遊びであればたいていはそこで片付く。
 かくれんぼにはじまり、ケイドロ、中当て、氷鬼、縄跳び、ろくむしといったアクティビティにゲームやカード、夏の夜であれば花火など、遊びはそこで催されていた。
 最近はもう、花火はできないかもしれない。

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