人妻の躓き、または大人の選択
すこし前の話題になるけれど、同世代の女優さんがW不倫したと話題になった。
(続報がないのでその後どうなったのかは知らない)
そこでふと、アリス・マンローが読みたくなってあれこれとページをめくっていた。主人公は主婦が多いし、不倫がテーマになっているものも少なからずある。モラハラ夫を捨てる逃避行もあれば、一人でいる時にふと見知らぬ男性と肌を重ねた午後、数十年ぶりに会った初恋の人に心を奪われる、なんてものもある。
(全てを読み返した訳ではないのであまり正確ではないかもしれないけど)
とはいえ、実際に不倫する人って言われているほど多くはない気がする(だからニュースになるのだ)。アンナ・カレーニナなんかは若いうちに結婚したので「恋愛」がイコール「不倫」になっただけだろう。今は結婚前の恋愛が自由なので、ああいう悲劇?はあまり起こらない気がする。
でも、わたしが好きなアリス・マンローの不倫ものはちょっと違う。
そこにあるのは胸を焦がす恋というより、単なる選択、またはちょっとした「賭け」のようなもの。臨時収入を手に一人でショッピングに出かけ、普段だったら選ばないテイストの服を見つけ買ってみた感じだ。
お気に入りの一着だけれど、人生を変えるようなものではない。何年か着てくたびれて来たら、あっさりと捨ててしまえる。年老いてから昔の写真を見て、ああこんな服を持っていたなーと思い出すくらいはする、と言ったら軽すぎるだろうか。
でも「恋愛して結婚して子供を産み幸せに暮らしました」という物語に、胡散臭さを感じるセンスの持ち主がアリス・マンローの主人公達だと思う。もう何もしなくて良いんだよ、と言われた時の不安や迷い。自分の幸せに対する焦り。それを感じた時に彼女達は小さな「賭け」をするのかもしれない。そこにやたら共感している自分がいる。
件の女優さんは離婚覚悟の不倫だったそうなので、アリス・マンローの主婦達とはだいぶ違う「選択」だったとは思う。ただ彼女も目の前の「普通の」幸せ物語を疑える人だったのではないかという気がしている。
余談だけれど、ワーキングマザーはよく不倫するとしたり顔で言う人がいるが、これはかなり疑わしい。「浮気する時間があったら熟睡したい」という言葉が全てを語っていると思う。
いつだって不倫に夢や憧れを持つのは、結婚前に恋愛をしないまま、お金と地位を得た男性という気がする。そして彼らの中には「普通の」幸せ物語が、疑われる事もなく存在しているんだろう。うんうん。
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