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【読書感想】月形洗蔵 薩長連合その先駆者の生涯
こんばんは。博多佐之助です。
前回の記事で紹介した書籍『月形洗蔵 薩長連合その先駆者の生涯』の感想です!
小説と伝記
この書籍のジャンルは「伝記」です。
ボクが月形洗蔵という男の存在を知ったきっかけは葉室麟先生著の『月神』という小説でした。恐らく月形洗蔵を扱った小説はこの作品だけでしょう。
また月形洗蔵の伝記も今回読んだ本のみがこの世に存在していると思います。
小説は言ってしまえばファンタジー、虚構の世界です。史実を元にしているとは言え、ただ過去の出来事を淡々と文字に起こすのではなく、登場人物たちの感情や人間関係を描き物語を分厚くする為には誇大な表現が必要な時もあるでしょう。
一方、伝記は史実に即して出来事や人物像を書き出したものだとボクは認識しています。
もちろん著者の感情や考えも入ることはあるでしょうが、そこに創造はありません。
史料は絶対か
とは言え、100%正しい歴史を知ることなんて中々できないですよね。
今の教科書がどうなのか知らないけれど少なくともボクは「薩長同盟とは坂本龍馬が実現させたものである」と習いました。
本当はもっと事実が書かれていたかもしれませんが、そのぐらいのことを覚えておけばいいやぐらいの認識でした。
幕末の本を見ても同じようなことが書かれている訳ですが、月形洗蔵や幕末の福岡のことを調べれば調べるほど、薩長が和解し後に連合を組んだのは坂本龍馬1人だけの功績ではないことがわかります。
教科書に書かれていることは間違いではないけれど、歴史は偉人と呼ばれる人だけではなく史料にすら載らない多くの人々の命があって作られている。
所詮、学校の教育で習える歴史は大まかな流れだけ。歴史は暗記と思われるけど、そこに潜むドラマをもっと感じれば漫画みたいにスルスルと頭に入ってくるし、より深い教養になるのになと思う次第です。
人は自分の立場が一番大事
ボクらが幕末と呼んでいる時代の人々は当然生きている最中に「今って幕末だよね~」と思って生きていません。
倒幕運動は盛んではあったものの、200年以上続いた徳川幕府がそう簡単に崩れはしないだろうと思っていた人の方が多かったかもしれません。
月形洗蔵や西郷隆盛、高杉晋作は各々の考えが重なる部分もあれば相いれない部分もあった。しかし彼らに共通していたのは「日本という国を守る」という志。
一方で徳川の人間、各藩の首脳陣の多くは日本という国よりも自分たちの立場や地位を守り抜くことに注力している印象です。
客観的に見れば月形洗蔵たちの立場の人間たちがカッコイイと思うし、権力者は地位にしがみつくだけで格好悪く思えます。
でも考えてみれば、これまでの環境が一変した世界でどれだけの人が冷静に自分以外のことを考えることができるでしょう。
家族がいる人は国は世界のことより、まず自分の家族を守ることが最優先だと思うし、その為なら周囲がどれだけ困ろうが構わないという気持ちは何一つ間違いではありません。
「歴史は繰り返す」なんて言います。どれだけ科学技術が進歩し倫理観が変化しても根底にある「自分の身の安全が何より大事」という本能がある限り、その言葉は言いえて妙だなと感じる次第です。
歴史の「もしも」が創作意欲を湧き起こす
月形洗蔵は過激な尊王攘夷派の人間であることは間違いありませんが、外国のもの全てを否定していた人間ではないとこの本には書かれています。
それだけに、生涯をずっと福岡で過ごしたことが悔やまれます。もしも彼が脱藩して日本にいる様々な考えに触れていたら歴史に名を遺すような偉業を成し遂げていたかもしれない!と考えてしまいます。
恐らく実在した人物を題材にした時代小説や映画はそんな「もしも」を描きたい。見てみたいという作り手の創作意欲が湧き出して形になったものなのでしょう。
「福岡を舞台にした時代劇を作る」という目標を掲げているボクとしては、この本とこのタイミングで出会えたことはこの上ない幸運でした。