小説「哀愁のアクエレッロ」:七章・独り占め
ジョットーの鐘楼を過ぎ、アルノ川を越え、ユースに辿り着いたときにはとうに夜中の一時をまわっていた。そしてドアの前まで来て愕然とした。アーチ型をした木製の扉がぴっちりと閉められていたからだ。扉を叩いてみても、空しい音が人影のない路地に響き渡るだけである。よく見ると扉の横に、
門限は十二時です
と書かれた貼り紙がしてあるのだった。こんなにも充実した一日でさえ、すんなりハッピーエンドとはいかないようだ。それもまた旅の面白さの一つでもあるのだが。
仕方がないので僕は暗いフ