見出し画像

まじかよ!ファンタティックコント~万歩計の正しい使い方編~

こんな使い方もあるよ。

 ① 水泳はダメ

  水泳選手が今日も万歩計をつけて、プールに飛び込みました。
 いくら泳いでも、万歩計は〇歩でした。
「なんで、ターンが数えられないのかな。これで今日の練習量がわかるのに」
 万歩計は錆びついていました。 

② 野球チームの歩数は

  真冬の草野球リーグ戦。
 今日はエースの登板です。
 監督の指示で、チーム全員が万歩計を付けました。万歩計のデータで、試合の様子がわかるんそうです。
 エースが胸を叩きました。
「俺に任せろ。無駄に歩くことなんか、なくなるさ」
 投げました。
 絶好調でした。
 万歩計の歩数は伸びません。
 みんな、ベンチと守備のポジションを往復するだけ。
 エースが、ランニングホームラン。
 試合終了。
 万歩計は最少記録を達成しました。
 ピッチャーとキャッチャー以外の七人は、風邪をひきました。
 次の試合は棄権しました。
 ハクション
 大会の主催者が監督を慰めました。
「せっかく完全試合をしたのにね。適当に走った方が健康にいいよ」 

③ 万歩計で競馬 

 レースに参加する競走馬の全部に、万歩計を付けました。
 歩数の多い馬が、勝ちという新ルールでした。
 ゴールすると、万歩計は自動で停まる仕組みでした。
 レースが始まりました。
 どの馬も、同じ場所を行ったり来たり。
 一頭もゴールしませんでした。
 馬券は返金になりました。 
 馬たちはくたびれて、馬場に寝っ転がってしまいました。
 万歩計がようやく止まりました。 

④ ムカデの万歩計

  ムカデに万歩計を付けてみました。
 ゆるゆるでした。
 歩くたびに、にぎやかな音を立てました。
 タップダンスを覚えました。
 虫の世界でスターになりました。 

⑤ 自家発電の万歩計

 万歩計会社のスリムな日焼けした技術部長が、太った貫禄のあるお酒と焼き肉の大好きな高血圧の社長に、新開発の万歩計を説明しました。
「この新しい万歩計は、歩く振動で自動的に充電します。電池は不要です」
 社長の質問。
「お散歩をサボったら、自然に放電して充電器は切れるよな」
「一万歩、歩けば、基礎充電が終わります。実は歩かないと、一日で充電器が切れる仕組みになっています。50年間の品質保証付きです。まずは社長から、お使いください」
 技術部員は、一斉に頷きました。

⑥ 万歩計の普及作戦

 万歩計会社の営業部長が、社長に新商品の営業戦略を説明しました。
「南極と北極の観測隊で、使用してもらいます」
「よくわからないけど、いいね」
 南極と北極で、CM撮影の本番開始。
 隊員が笑顔でカメラの前に立ち、万歩計を取り出しました。
「僕たちも、使っています」
「はい、カット。撮影終了です」
「お疲れさまでした」
 CMは全国に放送される予定でした。
 現地で営業部長が撮影用の万歩計を持って、凍えながら呟きました。
「テレビ画面の左右で、南極と北極の隊員が、声を合わせて同じ宣伝をする。これは『地球のみんなで使いましょうね』という、奥深いメッセージなのだ」
 営業部長の手に、万歩計が凍って貼り付いてしまいました。
 いく腕を振っても取れません。
「こんな使い方があったんだ。体が暖かくなってきたぞ」
 万歩計は営業部長の腕を振った回数を計測していました。

⑦ 歩数勝負のゴルフ試合

 万歩計会社がゴルフツァーのスポンサーになりました。
『万歩計カップ』の開催です。
 ラウンドしたプロゴルファーの中で、一番歩数が少ないプロが優勝です。
 表彰式。
 社長が優勝したプロに、トロフィーを手渡しました。
 優勝インタビューが始まりました。
 優勝した選手が、マイクの前で寂しそうな顔をしました。
「私のスコアは、トップだったんですけどね」
 トロフィーはでっかい万歩計でした。
 インタビュアー。
「この万歩計の使い道は」
 プロゴルファーが一言。
「リビングにでも、飾っておきますよ」 

⑧ 歩きと走りの合計は

 新しい万歩計を買いました。
 一日目、犬の散歩で、いつもより伸びて、一万歩。
 二日目、野良犬に追いかけられ、一千歩。
 三日目 転んで救急車で、百歩。
 四日目 入院して、十歩。
 五日目 杖で、〇歩。

⑨ スピードまで必要なのか

 新しい万歩計を買いました。
 今度の万歩計には、スピードメーターがついています。
 走ってみました。
 時速がでました。
 百メートルに換算してみました。世界記録になっていました。
 何回走っても新記録がでした。
 保証期間中ですので、修理に出しました。

⑩ ボタンの多い腕時計

 マラソンランナーが大会に出ました。
 新型の万歩計付きの多機能腕時計をはめました。
「試しに歩数を測ってみようっと」
 スタート。腕時計のボタンを押しました。
 目覚ましになりました。
 腕時計のボタンを押しました。
 逆算タイマーが作動しました。
 頭にきて、ほかのボタンを押しました。
 ライトが付きました。
 また押しました。
 世界時間です。
 もう一度押しました。
 ストップウォッチです。
「家に帰ったら、取説読もうっと」
 まわりには、誰もいませんでした。
 大会役員がゴールのテープを張っていました。
「はやく行きなさい。もうすぐトップのランナーが帰って来るよ」


いいなと思ったら応援しよう!

火山竜一  ( ひやま りゅういち )
サポートしていただき、ありがとうございます。笑って泣いて元気になれるような作品を投稿していきたいと思います。よろしくお願いいたします。