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短歌自選集

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その1年詠んだ歌から、30首自選したものを毎年ひとつずつ加えていきたいと思います。
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2023年12月の記事一覧

2023年の自選短歌30首

2023年の自選短歌30首

ふるさとの匂いに声が溢れそう尾びれを脚に換えた夜から

日に焼けたコバルト文庫の背表紙に遠くなりゆく小五のこころ
クッキーの缶をあつめてどの蓋もナルニア国へと通じる扉
どこまでも夢でいいのにママの手でヴィックスヴェポラップ厚く塗られて
陽だまりに油粘土を置いている別のいのちが生まれてもいい

重力は光も曲げると説くきみの声が揺らした赤い風鈴
だめだった今日の体を湯に浸しふやけた指がすこしおいしい

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