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刃月

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刀剣乱舞二次創作
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それぞれの変化

「歌仙」
「主。…すまないね、無様な姿を」
「無理して体起こさなくていいよ、横になってて。それにそれのは私の台詞。…ごめんね、思っていたより敵進行が速かった。蛍も部隊に加えていれば―」

 それは政府からの新たな指令だった。時は延享、江戸新橋に於いて敵の攻撃を確認。迅速に之を討ち、改変点を調査せよ―と。
 どうやら歌仙や小夜に縁のある時代のようで、二振を主軸に調査に向かわせた。結果は上々、敵本陣を

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NGシーン

『似た者同士と夢心地』

条件:へし切長谷部・歌仙兼定・言代霞月
時刻:真夜中
場所:本丸三階(歌仙兼定の部屋の前)

「そうやって気に食わないものを何でも彼んでも斬ろうとするのは風流じゃないな」
「それをお前が言うのか。大抵の事を力尽くで片付けようとするお前が―!」
「はん、きみなんて何かあれば〝圧し斬る〟しか言わないだろう」
「貴様…!」
「………ん、ぅ」

 次第に熱を増す応酬から、長谷部の

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つなぐもの

 離れの風呂場から戻り、目指すは歌仙の部屋。俺たち刀剣男士の居住区画は二階から四階にあり、主の部屋は最上階にある。
 風呂場の蒸気に慣れた体に冬の夜気は一層凍みる。二階まで上がれば壁に阻まれ幾分ましになるが、それでも早く布団に寝かさなければ主が風邪を引いてしまう。
 この時刻、二階から上の光源は窓から射し込む月だけだが、その光は未だ明るく、灯りの必要性を感じさせない。深夜に相応しい静けさの中、聞こ

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くゆる想い

「……主、ここはまさか」
「うん、私たちが使ってるお風呂だよ。長谷部も起きてるって知ってたら、大風呂の方を準備してきたんだけど」
「ならば俺はそちらの準備をして参りましょう」
「…やっぱりやだ?こっちで入るの」
「……。」

 何故俺が主と共に風呂場に来ているのかと言うと、事態は十分程前に遡る。

 それは主の誓いを聞き、漸く主の心からの笑顔を見られたと密かに喜んでいた時のこと。

「さて、私の話

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告解(改稿)

 ふと白いものが視界の端に映り、振り向けば吐く息よりも尚白い風景が目の前に広がっていた。
 遠征に出る頃に降り始めた雪は戻った時には止んでいて、二月らしい雪化粧が城に施されていた。
 今は地を撫でる風にその欠片を散らし、月明かりを受けて昼よりも明るく庭を照らしている。先程視界に映ったのはこの風で巻き上げられた一欠片だろう。見上げれば空は綺麗に晴れ、月が煌々とその光を注いでいた。
 黒、白、藍の世界

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自覚

 それは審神者の定例会でのことだった。

 数週に一度、私たち審神者は政府塔に集められ、お偉いさんから注意事項を聞いたり、特に中身のないお言葉を頂戴したりする。そのあとは審神者同士で意見や情報を交換をし合い、銘々好きなタイミングで本丸に戻る。
 この定例会では、希望を出せば刀剣男士を一振だけ連れていくことができるのだけど、まあ長谷部の多いこと多いこと…。あんまりにも同じ顔を見るものだから最初のうち

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信頼

その後、政府により手配された救命部隊が駆けつけ、霞月は政府直下の病院へと迅速に搬送された。
歌仙は付き添いを許されたが、青江は―

「申し訳ありません、随伴登録は歌仙兼定とへし切長谷部の二振しか行われておらず…」
「ああ、解ってるよ。組織はそういうものだからねぇ」

規則外を、例外を認めない。つまり随伴登録の為されていない青江は付き添うことができない。
斬りつけた張本人だと言うのに傍で〝生きてくれ

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厭魅

本丸―歴史修正主義者と戦う刀剣男士にとっては住まいであり、彼らを指揮する審神者にとっては仕事場である。造りとしては、一階に執務室、食堂、厨、書庫が。刀剣男士たちの居住区画が二階、審神者の私室が三階にある。外には手合わせの為の道場や、大風呂、鍛刀の鍛冶場に手入れの救護部屋、果ては畑など様々な設備がある。
過去へと移動できる特殊な空間に築かれたこの城は、基本的に関係者以外立ち入りできない。つまりは平穏

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NG集

【かっこいい刀剣】
はせべ:…長政さまも良い主でした。ですが、一番はあなたです。あなたが望むなら、俺はいつまでも傍にいます

さにわ:長谷部みたいに格好いい刀剣男士から言われるとさすがに照れるな
はせべ:光忠には聞かせられませんね

みつただ:ご指名かい!?(障子スパーン!!)
はせべ:引っ込め伊達男!(ハリセンスパーン!!)

【なにかのおてつだい】
さにわ:私は女の子として扱われてしまうの

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いっしょに

一頻り涙を流し終え、気を落ち着かせようと呼吸を繰り返していると、間近で主の鼓動を感じた。
規則正しい、穏やかな鼓動。刀だが、俺にも同じものが流れている。
落ち着く音だった。
そしてふと、俺の頭を撫でていた主の手が、いつの間にか止まっていることに気が付いた。

「主…?」
「………」

返ってきたのは静かな寝息。
ゆっくりと上体を起こし主を窺うと、面が風に煽られていた。
面の下に見えたのは、二十にか

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繋いだ手

不意に手を柔く強く握られる。

「お前が…」
「はい」
「お前が死を望んだとして、私は、私が与えた命を簡単に手放しはしない。私が与えた。お前の命は私のものだ。いくらお前が死者に焦がれて逝こうとしても、私はお前を現世に縛る。この手を決して離さない。私を恨んでいい、憎んでいいから」

私の元から勝手に去らないで。
死なないで。
と、呟かれたそれは切実な呪詛で。
俺には何物にも代えられない祝詞であった。

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告解

雪が積もった庭に月が光を投げかけている。冬好きな審神者が寒さに震えながらも笑ってこの景色を眺めていたのを、へし切長谷部は思い返していた。
人の体を得て暫く経つが、感覚というのは実に不思議なものだと思いながら、長谷部は足先が冷えるのも構わず縁側に腰を下ろした。

あの時は、寒いなら暖かい場所へ行くか、暖かい恰好をするよう進言した。人の体は変調しやすく、実に容易く体調を崩す。
風邪を召されないようにと

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昔の話

 霞月が、審神者として就任し、未だ日の浅い頃の話。

 送り出した部隊が不意を突かれ、隊長であった歌仙兼定が皆を逃がす為一振残ったと報告を受けた。

「―だから、歌仙だけいない、と」

 執務室の机の上にふわふわと漂いながら、綿毛姿の霞月は低い声で答えた。

「申し訳ありません…。頃合いを見て救出に戻ろうとしたのですが、濃霧と追っ手に阻まれ、帰り道を見失わないようにするのが精一杯で…。部隊は傷を負

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