「マルメロの陽光」(スペイン映画)、作品の風景そのものが、スペインという国を表している。ビクトル・エリセ監督作品その3
スペイン人監督、ビクトル・エリセーの第3作目。
スペインというと、情熱の国とよく言われますが、それは、ごくごく一部の表面的な話だということに、スペインへの旅を通して感じるに至りました。
本来は、人情に厚く、素朴で、人懐っこい人たちがのんびり静かに暮らす国。そのスペインという国の一つの側面を、しっかり切り取って見せてくれるのがこの映画。
この映画、まるでロンドンにいるかのような、薄曇りの空模様の中、たんたんとマルメロ(黄色い果実)を題材に絵を描く画家の姿を追っている。
何かが起きるわけでもなく、すばらしい音楽があるわけでもない。ただただ、絵に取り組む画家の日常を映し出しているのみ。
だが、なぜか、、この映画からは、素朴な感動を得ることができる。
それは、絵に取り組む画家のひたむきさがそうさせるのか、彼を囲む家族や友人の暖かさがそうさせるのか・・
きっと、彼らをつつむ、スペインという大地と、その素朴さ、乾いた空気、街が醸し出すわびしさなどが、そうさせるのでしょう。
近くを走る電車の音、飼い犬の鳴き声、画家がキャンバスに描きつける音、風の音、雨の音。。。
周りを囲むすべてのものも含めて、このドキュメントは成立している。だからこそ、たんたんとしているのに、じんわりと心に響いてくる。
映画の風景そのものが、スペインという国を表しているように、、そんなふうに感じることができる作品です。
静かな昼下がりに。
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