名匠の描く、愛の姿 ~「サンピエールの生命」(フランス映画)
人は、他人をみるとき、往々にして外見に惑わされてしまう。
でも、その人の”本当”は心の中にある。その心の部分を理解できるかどうか。全人類の永遠の課題なのかもしれません。
この映画の主人公ジュリエット・ビノシュ演じるマダムは、はずみで犯罪を犯してしまった男に献身的な視線を注ぎます。
たしかに、犯罪は犯した。でもそれはこの人の”本当”の心ではない。
それをマダムは敏感に感じ取っていきます。
マダムには厳格な、サンピエール島の主ジャンという夫がいます。囚人との交流はタブー視されうるものです。ですが、ジャンは妻の気持ちを察してか、この二人の交流を静かに見守っていきます。
この3者の”本当”の心は、限りなく純粋なものなんだと思います。二人を見守るジャンの姿にとても心を打たれます。
でも、こんな日々は長く続かない。
彼らを悲劇が襲うことになります。囚人を処刑するために、ギロチンがフランス本土より届けられる。
そして・・・
愛という言葉では陳腐になりすぎてしまいますが、このラストをみて、痛々しいまでに、愛という感情の熱さ、力強さを感じてしまいました。
こんな形の愛もあるんでしょう。パトリス・ルコントが描いた至上の愛の姿がここにあります。
ちなみに、現在のタイトルは『サンピエールの未亡人』
原題:LA VEUVE DE SAINT-PIERRE。
VEUVE には未亡人という意味もありますが、ギロチンという意味もあるそうです。この比喩が、この映画の何たるかをあらわしているような気がします。映画の結末にもつながるヒントにもなります。
ラストについては多くは語りません。ただ、おそらくは、人を心で愛する最高の形が描かれています。
名匠の描く、愛の姿。
ぜひご覧になってみてください。
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