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大乗仏教 如来蔵思想・唯識思想

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#マイトレーヤ

【大乗仏教】瑜伽行唯識派

【大乗仏教】瑜伽行唯識派

唯識思想の体系化に重要な役割を果たしたのは、4~5世紀頃に活動した無著(アサンガ)とその弟である世親(ヴァスバンドゥ)ですが、この兄弟が現れる以前に唯識思想を展開させた「解深密教」および弥勒菩薩(マイトレーヤ)の著作として伝えられる数編の論書が存在していたと言われいます。「解深密教」は如来蔵思想を説いた「如来蔵経」「勝鬘経」等と共に中期大乗経典の一つとして紀元後200-400年頃に現れたと想定され

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【大乗仏教】唯識派 唯識二派

【大乗仏教】唯識派 唯識二派

六世紀の初頭にナーランダー出身の徳慧(グナマティ)は西インドのカーティアワール半島にあるヴァラビーに移り、彼の弟子である安慧(スティラマティ)に至って、この地の仏教学は最盛期を迎えたと言われます。同じ頃、ナーランダーにおいては護法(ダルマパーラ)が活動していましたが、安慧(スティラマティ)と護法(ダルマパーラ)の間には唯識説の解釈に相違がありました。

前者は阿頼耶識が最終的には否定されることで、

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【大乗仏教】唯識派 三性説②

【大乗仏教】唯識派 三性説②

今回は弥勒(マイトレーヤ)の著書である『大乗荘厳経論』の三性説について、お話していきます。ここから三性の解説が唯識派に特徴的なものになっていきます。

・遍計所執相(遍計所執性)
=絶えず二を離れたもの
=遍く知られるべきもの
=言葉や対象に依って顕現しただけの名称なので非存在

・依他起相(依他起性)=虚妄分別
=二の迷乱:迷乱の依り所
=幻のようなもの
=断じられるべきもの
=所取(器世間・六

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【大乗仏教】唯識派 三性説③

【大乗仏教】唯識派 三性説③

ここまでの内容を簡単にまとめます。

弥勒(マイトレーヤ)の『大乗荘厳経論』では「見分と相分」について、「二の迷乱」となっていましたが、『中辺分別論』における「二つのもの」とは「阿頼耶識(識)とその顕現である見分・相分(四通りの対象)」を示していると筆者は考えています。

そして、注釈者である世親(ヴァスバンドゥ)はおそらく、二つのものを遍計所執における主観・客観のことであると理解していると思われ

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【大乗仏教】唯識派 三性説④

【大乗仏教】唯識派 三性説④

弥勒(マイトレーヤ)の著書「中辺分別論」における三性説の続きになります。想像よりもかなり長くなってきましたので、少し急ぎ足になります。

あくまで筆者は次のような意味と考えていますが、様々な説があります。

・識(阿頼耶識の種子)が現勢化する時、それは{色声香味触法}の六境として、{眼耳鼻舌身意}の六根として、末那識として、及び{眼耳鼻舌身意}の六識として四通りに顕現する。
・しかし、識(阿頼耶識

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【大乗仏教】唯識派 三性説⑤

【大乗仏教】唯識派 三性説⑤

弥勒(マイトレーヤ)の三性説の説明が長くなってしまいましたが、今回は無著(アサンガ)の著書である『摂大乗論』における三性説を見ていきます。

・依他起性(雑染と清浄の二分)
阿頼耶識を種子とし、虚妄分別によって集められた表象(相分)です。阿頼耶識という種子から生じた十一種の表象が説かれますが、これらは阿頼耶識の種子から生じた六識の内部にある六根・六境・器世間といった相分と同義と考えられます。

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【大乗仏教】唯識派 三性説⑥

【大乗仏教】唯識派 三性説⑥

三性説の最後に、世親(ヴァスバンドゥ)の三性説を見ていきたいと思います。世親は『唯識二十論』等において、表象主義的な唯識論を展開していたため、おそらく無著(アサンガ)と同じく有形象唯識論側な唯識観を持っていたと思われます。

依他起にとって、遍計所執がなくなった状態が円成実であると世親(ヴァスバンドゥ)は考えているため、この点は無著(アサンガ)の三性の解釈と同じであることが分かります。

・遍計所

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