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大乗仏教 如来蔵思想・唯識思想

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#三性説

【大乗仏教】唯識派 三性説①

【大乗仏教】唯識派 三性説①

今回より、唯識思想の中でも難しいと言われる「三性説」に入っていきます。この「三性説」において、弥勒(マイトレーヤ)・無著(アサンガ)同一人物説の矛盾を示していきたいと思いますので、少々長くなります。

三性(三種の存在形態)は唯識派によって創説されたものではなく、元来は「般若経典」に説かれていた教えを唯識派が学説化したとされています。陳那(ディグナーガ)は『八千頌般若経』の網要をまとめた「般若経の

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【大乗仏教】唯識派 三性説②

【大乗仏教】唯識派 三性説②

今回は弥勒(マイトレーヤ)の著書である『大乗荘厳経論』の三性説について、お話していきます。ここから三性の解説が唯識派に特徴的なものになっていきます。

・遍計所執相(遍計所執性)
=絶えず二を離れたもの
=遍く知られるべきもの
=言葉や対象に依って顕現しただけの名称なので非存在

・依他起相(依他起性)=虚妄分別
=二の迷乱:迷乱の依り所
=幻のようなもの
=断じられるべきもの
=所取(器世間・六

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【大乗仏教】唯識派 三性説③

【大乗仏教】唯識派 三性説③

ここまでの内容を簡単にまとめます。

弥勒(マイトレーヤ)の『大乗荘厳経論』では「見分と相分」について、「二の迷乱」となっていましたが、『中辺分別論』における「二つのもの」とは「阿頼耶識(識)とその顕現である見分・相分(四通りの対象)」を示していると筆者は考えています。

そして、注釈者である世親(ヴァスバンドゥ)はおそらく、二つのものを遍計所執における主観・客観のことであると理解していると思われ

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【大乗仏教】唯識派 三性説④

【大乗仏教】唯識派 三性説④

弥勒(マイトレーヤ)の著書「中辺分別論」における三性説の続きになります。想像よりもかなり長くなってきましたので、少し急ぎ足になります。

あくまで筆者は次のような意味と考えていますが、様々な説があります。

・識(阿頼耶識の種子)が現勢化する時、それは{色声香味触法}の六境として、{眼耳鼻舌身意}の六根として、末那識として、及び{眼耳鼻舌身意}の六識として四通りに顕現する。
・しかし、識(阿頼耶識

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【大乗仏教】唯識派 三性説⑤

【大乗仏教】唯識派 三性説⑤

弥勒(マイトレーヤ)の三性説の説明が長くなってしまいましたが、今回は無著(アサンガ)の著書である『摂大乗論』における三性説を見ていきます。

・依他起性(雑染と清浄の二分)
阿頼耶識を種子とし、虚妄分別によって集められた表象(相分)です。阿頼耶識という種子から生じた十一種の表象が説かれますが、これらは阿頼耶識の種子から生じた六識の内部にある六根・六境・器世間といった相分と同義と考えられます。

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【大乗仏教】唯識派 三性説⑥

【大乗仏教】唯識派 三性説⑥

三性説の最後に、世親(ヴァスバンドゥ)の三性説を見ていきたいと思います。世親は『唯識二十論』等において、表象主義的な唯識論を展開していたため、おそらく無著(アサンガ)と同じく有形象唯識論側な唯識観を持っていたと思われます。

依他起にとって、遍計所執がなくなった状態が円成実であると世親(ヴァスバンドゥ)は考えているため、この点は無著(アサンガ)の三性の解釈と同じであることが分かります。

・遍計所

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