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東京で起きたふしぎなできごと第二話

前回の話
https://note.com/hiroreiko/n/n0e16428efb28

ラッシュアワーではなくお昼の時間帯で車が少なかったせいか、空港へはいつもより10分早く着いた。

 順調だな

「2480円です」

お金を渡した後、運転手はトランクからスーツケースを下ろすため降りた。

2つあるスーツケースのうち妻のれいこのは上にある。

さきに取り出してもらえれば私のはもう落とすことはないだろう。さっきも落としたことだし注意するはずだ。

だが甘かった。

なんとまたも運転手は私のカートを固いアスファルトの上にじかに落としたのだ。

 「あ、あぁー。ナンデ滑るんかな」

ノッポタクシーの特性でトランクの縁が浅いせいかそのまま取り出すと滑り落ちた。

 おいおいちょっと待ってくれよ。トランクのせいにするんか。

スムーズに事が運んでいたのに運転手の注意力の無さでスーツケースをアスファルトの上にじかにぶつけてしまった。

すると何と引手の部分にロックがかかってしまい、引き手が出なくなった。

背を折り曲げてカートにじかについている取っ手をもたなければならなくなった。

これは不便だ!

さすがの私も堪忍袋の緒が切れた。

しかしあくまでそこは紳士的に対応しよう。

「あのー、ちょっと困るんですけどね。

壊してもらっちゃ。

2回目ですよこれで。

さっき落としたときに注意しないと

いけないじゃないですか。

こういうのって保障とかあるじゃないですか。

そこはどうなってますか?」

言いにくい想いを脇に置いて尋ねた。

「あぁどうもすみません。

会社のほうに言ってもらえますかね」

「わかりました」

空港へ着き、搭乗手続きを済ました後タクシー会社に電話した。

「これこれかくかくしかじかこうで、責任者の方から折り返し電話もらえますかね」

「わかりました」

その後いつも行くすし屋に寄り、出発前までの20分間でにぎりと赤だしを食べていたところ電話がかかってきた。

「なんかご迷惑をおかけしたようで……」

「そうそう。2回も落とされたんですよ。

長年おたくを使っているけれど、こんなのは初めてですよ。

ちょっと注意してもらわないと困りますよ」

「あー、申し訳ありません。

それでしたら〇〇していただければ」

「あはい。〇〇すればいいんですね」

つい相手の提案に乗ってしまい○○すると言ってしまった。

本来は相手のミスだし迷惑をかけたのは相手のことなのに人の良さが災いしてみずからどろをかぶってしまったのだ。

まさにセミナーでいつも話している不満は言うが要望は言っていない状態になったのだ。

これじゃいかん。

よし、東京に着いてからもう一度要望をしよう。

そう考え飛行機へと乗り込んだ。

                   ……つづく


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