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OKR導入時に注意すべきポイント

目標管理制度といえば、Peter Druckerが導入したMBO(Management by Objectives)が有名だが、昨今インテルやグーグルで導入されたOKR(Objetives and Key Results)が少しずつ広まっている様に思える。

このOKRに関しては、私自身複数のクライアントと一緒に導入を推進する中で、よく出会う課題がいくつかある。

今回はそれら課題と、考え得る対策を一緒にまとめてみた。

※本投稿はOKRとは何かを理解したい方を想定したものではなく、既にOKRの概観をつかんでおり、導入を検討しているもしくは導入中の方を想定してる。

課題①:ObjectivesやKey Resultsがやたら多い

たまに年次、もしくは四半期OKRに10個以上の箇条書きが並んでいるOKRツリーを見かける。

気持ちは分かる。

世の中はやらなければならないことで溢れている。

しかし、OKRはタスクリストではない

その本質は「Focus(優先度付け)」にある

「重要度は低~中だが緊急度は高」タイプのタスクのせいで、「重要度は高だが緊急度は低~中程度」のものが一向に前に進まないことを防ぐのがOKRの狙いの一つである。

OKRが増える傾向がある場合、「この四半期で成し遂げたい1番大切なものは何か?」と問いかけ、慣れるまではあえて1つだけに絞らせるという方法もある。

OKRの教科書通り2~3個に縛られると、2個が3個になり、3個が5個になり、気付けば5個が10個になる。

これはマネジメントも例外ではない。

マネジメントは業務範囲が比較的広いため、OKRが多岐に渡りやすい。

その場合でも、少なくとも各主要業務領域で一つ程度になる様にOKRの数を慎重にコントロールすることが求められる。

マネジメントのOKRが10~20個もあると、その数が正解だと思われてしまう可能性がある。

思い切って、この四半期で一番重要なこと1つを挙げてみる

これが一つ目のポイントである。

課題②:マイクロマネジメントという不満

OKRのベストプラクティスの一つとして、週次のチェックインがある。

このチェックインを使って、その週の優先度を確認しつつ、その週に達成したことを祝う。

但し、これが「定例の進捗会議」になってしまうと「管理されている」という印象を与えてしまう。

更に課題①で触れたOKRの設定がタスクリストの様になってしまっている場合、余計に「自分のタスクが週次で監視される」という印象を与えてしまう。

OKRの思想はマイクロマネジメントの真逆である。

OKRは定期的に優先度を確認し、その中で各々が自ら考えて動くための仕組みである。

そのためにも、マネジメント側が週次チェックインの目的を説明し、その目的に沿った運営をする(一個一個のタスクの進捗を怖い顔をして報告させるような運用をしない)ことが重要である。(詳細は、過去の投稿を参照)

課題③:定常業務 vs 非定常業務

OKRはタスクリストではない。

そのためOKRに載ってくることは改善業務であったり、プロジェクトワークだったりすることが多い。(OKRに定常業務を載せてしまうと、ただのタスクリストになってしまう。)

しかしここでよくあるのは、非定常業務は自分の業務と全く関係ない新しいものでなければいけないという誤解である。

非定常業務とは定常業務と無関係である必要はない

「既存の業務レベルを高める」ことは、十分にOKRで管理されるべき対象となる。

例えば、自分の業務が自社製品サイトの運用だったとする。

日々の業務はトラフィックを監視したり、サイトがダウンしない様にすることかもしれない。

しかし、その中で自社サイトを訪問するユーザの多くがログインをしないたえ、自社にユーザ情報が十分に蓄積されないということに気が付く。

そこで、Objectiveに「自社サイト訪問ユーザのログイン率5%改善させる」という目標を設定する。

この様に、定常業務の改善はここで言う非定常業務として立派に成立する。

課題④:忙しくて無理という不満

週次でのチェックインや改善業務へのチャレンジと聞くと、新たな業務が増え、負荷が増えるという不満が出てくる。

しかし、全てを新たに追加する必要はない

週次のチェックインは既存の定例打ち合わせ中で済ませてもいいし、時間がない時は立ち話で済ませてもよい。

更に、OKRの本質はFocusである。

何かをやるために何かを捨てる必要がある。

そのために、まずOKR導入後初めのObjectiveが「改善業務に充てるための時間を週1時間確保するために、既存業務の生産性を5%改善する」でも良い。

OKRを促進するマネジメント側がこの捨てる意識を持たなければならない。

繰り返すが、OKRの本質はFocus=取捨選択である。

マネジメント側が何かを捨てる勇気を持たない限り、やることが増えるという不満が出てきて当然である。

課題⑤:最善を狙いすぎる

「最善は善の敵」という言葉がある。

つまり、マネジメントが完璧を求めると部下が失敗を恐れ、逆に改善やチャレンジが生まれないというジレンマの事だ。

例えば、先ほどの自社製品サイトの例だと、ウェブサイトのサービスレベルを100%(24/7, 365日決してダウンしない)に設定したとしよう。

これ理想的な目標は、色々な意味で社員を苦しめることになる。

あのグーグルですら提供しているクラウドサービスのサービスレベルを100%ではなく、99.99%としている。

99.99%を100%にした時に発生するリスクやコストを認知しているからである。

そのため、OKRは挑戦を応援するものだが、目標設定の際は「サービスレベルを100%にする(Be good goals)」ではなく、「サービスレベルを現状よりもX%改善する、100%に近づける(Get better goals)」といった表現の方が好ましい。

まとめ

  • 対策①:OKRの設定がやたら多い場合は、1つだけに絞ってみる

  • 対策②:マイクロマネジメントの対極にある目的をしっかり説明する。
        また優先度のすり合わせに集中し、細かなHOWは任せる。

  • 対策③:定常業務の改善は非定常業務であるという理解を揃える。

  • 対策④:増える分は捨てる。捨てられない場合は補充する。

  • 対策⑤:Be good goalsではなく、Get better goalsを設定する。

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