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ASEANで次世代ローカルリーダーが辞める3つの理由

持続的な成功に不可欠なローカル人材と離職問題

ASEANでビジネスを「持続的に」成功させるためには、現地人材の活用が欠かせません。

それは単に人件費の抑制というコスト削減の側面だけではなく、ローカルの制度やニーズを汲み取ったビジネスの成長という側面でも効果を発揮します。

そこで多くの組織が特にマネージャー以上にローカル人材を登用することを目指し、採用や育成を進めます。

が、入社後2~3年経って「さあ、これから!」というタイミングで退社をしてしまうというケースが後を絶ちません。

無念ですよね。。。

これを「海外はジョブ型だし、転職しながらキャリアを構築する文化だからしかたがない」で片づけるのは簡単ですが、本当にそうなのでしょうか?

視点を変えて皆さんが働く側だったら、「国の文化だから」という理由だけで、苦労して入った会社を辞めるでしょうか?

理由によって変わる対策

転職には必ず理由があります。

そしてその理由によって対策は変わります。

例えば「給与水準」という一つの退職理由をとっても、「昇進+昇給」が欲しいという人にいくら「賞与」で報いようとしても全く響きません。

それは基本給こそが会社が評価する自分の価値であるという考え方が根底にあるからです。

つまり、彼らはボーナスの様な一時金でごまかされません。

この様に理由と対策がちぐはぐな場合、次世代リーダーの離職という問題自体が解決されません。

そのため、人が会社を離れる理由を正確に理解することが決定的に重要になります。

会社を辞める理由は人によって違う

長年人材育成の業界にいると、「社員のモチベーションを上げるためにどうすればいいのか?」という質問をもらうことがあります。

残念ながら人が働く理由は人によって異なるため、全てを一律的な答えはありません。

マズローの欲求5段階説によると、人間の欲求は「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」の5つの階層に分かれます。

これを踏まえると、相手が今どの段階にいて、どの段階の欲求を求めているのかによって、働く動機は変わるのです。

例えば、日々生きていくためのお金が必要という人の場合は、安定した生活を確保するため、仕事を選ぶ際に雇用の安定やより高い給与の確保が重要になります。

一方既に一定の財力や生活基盤がある人の場合、仕事に求めるものは自然とより上位にある「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」になります。

つまりその職場が自分を認めてくれる場所なのか、そこで働くことを自分が誇れる、もしくは家族が誇らしく思うかが重要になります。

ここまでが一般論。

ここからはいくつかの属性に分けてもう少し考察してみましょう。

①世代の特徴

今の時代はお金を稼ぐ手段が昔よりも幅広いという特徴があります。

若い世代(Z世代)程、お金だけを理由に会社に留まることを選ぶ人は少ないように思います。

事実コロナ禍の就職難で、転職先が決まらないままとりあえず会社を辞めた若者の話をよく聞きました。

これは大量離職(Great Resignation)という事象としても現れています。

この点、X世代やY世代の方が「我慢する美学」の様なものがあるのかもしれません。

②労働市場(国)の特徴

先日「シンガポールのスタバにMacBookを1時間放置したらどうなるのか?」という社会実験の記事を見ました。

結果は「誰も取らずにそのまま残っている」で、世界中から驚きのコメントが集まっていました。

この結果を踏まえて出てきた考察が、以下の3点です。

  1. Honesty and fairness are a big part of their culture.

  2. Basic needs are met so people don't feel like they need to resort to crime.

  3. Surveillance—There are currently 90,000 cameras in place.

全てなるほどと感じるのですが、ローカル人材の離職問題の文脈で私が注目したのは2つ目のポイントです。

つまり、シンガポールに居住し働く人々は、「Basic needs(基本的な欲求)」が満たされているため、金銭的価値が高いもののために何かを犠牲にする(今回の場合は犯罪を犯す)という選択をしないと解釈できます。

これは日本も近い部分があるかもしれないと思う一方、シンガポール以外のASEAN各国を見ると若干毛色が変わる気がしています。

この記事では各国の個別事情まで踏み込みませんが、一つ言えそうなのは、離職の原因分析に給与水準の論点は無視できないものの、それ以外のお金だけでは片付けられない人間らしい側面を見落とすと、対策を見誤る結果になりそうです。

では、お金以外の人間らしい側面というのは、具体的にどの様なものがあるのでしょうか?

お金以外で会社を辞める3つの理由

①企業文化

私はASEANで採用活動をする際、必ず聞く質問があります。

それは「弊社に入社したとしましょう。その後もし退社を決断する瞬間があったとした場合、それはどんな理由ですか?」という質問です。

これによってその人に退社を迫る程の状況を把握し、晴れて入社した後にそうならない様に注意をします。

私の経験上この質問に対する答えとして1番多いのは、「自分にとってもはやポジティブな環境じゃないと感じた時」です。

これは日本で採用活動をしていた時にあまり聞かなかった答えな気がしています。

この場合「ポジティブ」という表現には色々な意味が含まれており、掘り下げて聞くと、”Openness”, “Fairness”, “Friendliness”, “Inclusiveness”と言った言葉が挙げられます。

これと対極にあるのが、以下のような職場です。

  • 各部署のメンバーが別々に黙々と雑談もなく働き、会話は全て仕事の話。

  • フィードバックの内容は主に改善点で、良いポイントや仕事での成功を認め合う機会が少ない。

  • 上司が変わる度にフィードバックポイントが変わり、どうすれば昇進、昇格できるのかがわからない。

  • 常に緊張感やプレッシャーにさらされている。等々

みなさんの職場はいかがでしょうか?

ちなみに私の前職のコンサルティング企業の空気はこれに非常に近く、更に悪い事に私自身それに慣れ、居心地の良さすら感じていました。

転職をし、更に海外に住むようになった今では、自分がいた環境がいかに異常だったかを痛感させられます。

②人間関係

仮に職場全体の雰囲気がポジティブでも、人を退職に追い込むのが個々の人間関係です。

心理学者のアドラーも、人間のストレスのほとんどが人間関係に依存するものであることを認めています。

上司との関係、同僚との関係など色々ありますが、職場でのイジメはどこの国でも珍しくはありません。

前任が一切仕事を引き継いでくれない、同僚や関係部門が一切協力をしてくれないなど、その手段は多岐に渡りますが、問題は上司からそれが見えにくいケースが多く、退職に追い込まれるまで気がつかないケースが多い事です。

上司としては、職場に人間関係の問題は発生しうると自覚し、こまめに色々な人と会話をし、検知し、必要なサポートをしなければなりません。

万が一にでも、部下から人間関係に関する相談があった際に、「気のせいじゃない?」、「もう少し様子を見よう」で済ませてはいけません。

③個人の成長と自己実現

同じ給与でも、その報酬を通じて会社がいかに感謝をしているのか、自分に期待してくれているのかを「具体的に」伝え、更に成長できる環境を与えれば、同じ金額でも受け手の印象や意味合いが大きく変わります。

次世代リーダーの候補になりうる人材というのはどちらかというと目の前の生活に困っているというよりも、一定の生活水準は既に確保できており、更にその上を目指す、もしくは目指せる人材である可能性が高いです。

そのため、自分の上昇志向を満たすキャリアパスや成長、スキルアップの機会があるかどうかが彼らにとってかなり優先度が高い判断基準になります。

まとめ

このように世代交代、環境や価値観の変化や違いにより、特にASEANの文脈で優秀な人材を確保するためには、お金+αの要素を忘れてはいけなさそうです。

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