MBA Essentials 2020<総合コース>秋 第7回 破壊的イノベーション論のディスラプション
2020/12/2(水)にタイトルのセミナーを受講しました。
(disruption=「崩壊」「破壊」)
概要:破壊的イノベーション論のディスラプション
講師:根来 龍之 先生
早稲田大学 大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授
経営にとって、もっとも難しいのは「非連続」の変化に対応することです。そして、非連続の変化の大きな原因は、イノベーション(技術革新)です。このイノベーションにどう対応していくべきなのか、事例を通じて学びます。
本講座は、先生の著書『集中講義デジタル戦略:テクノロジーバトルのフレームワーク』の「パート2 ディスラプションの脅威」の解説ということでした。
先生は、MBA Essentialsのアドバンスコースという上位コースでも教えられているのですが、本講座とは「半分ほど重複」しているそうです。お得!
❶クリステンセンの「破壊的イノベーション」論
クリステンセンって?
『イノベーションのジレンマ』を書いたクレイトン・M・クリステンセンですね。
ちなみに、この本の英語タイトルをよく見てください。
『The Innovator's Dilemma』
となっていますね。
そう、
本当はイノベーションのジレンマではなくて、『イノベーターのジレンマ』
なのです。
突然ですが問題です。以下は破壊的イノベーションでしょうか?
・ブラウン管テレビ → 液晶テレビ
・白熱電球 → LED電球
・固定電話(プッシュホン) → 携帯電話(アナログ)
・ガラケー → スマホ
破壊的イノベーションの定義
なんてことだ…講義資料に書いてない。(汗)
※ちなみにほとんどの講義では、スライドと配布資料に違いがあります。
Wikipediaに書いてあるのが近いと思うのでそこから引用します。
従来の価値基準のもとではむしろ性能を低下させるが、新しい価値基準の下では従来製品よりも優れた特長を持つ技術、製品、ビジネスモデルがもたらす変化
つまり、新しい技術は既存より低い性能から生まれるが、時間とともに進化していき、やがて市場のメインを奪っていくのです。
※キーワード:技術の非連続、ラディカルイノベーション
例えば、デジカメ
出た当時はアナログカメラとは比べ物にならないくらいのショボイ解像度でしたが、ものすごいスピードで進化してアナログカメラを淘汰しました。
破壊的技術の製品化を始めるのは新規参入者(ジレンマ)
ここ重要です。
既存企業は、既存製品の性能アップ(持続的イノベーション)を優先します。
当面は利益が出ない新しい技術にお金をかけて、わざわざ性能の低くて既存のお客さんが求めていない製品を作ろうと思わないですよね?
だから対応が遅れる。
「あ、このままじゃまずいかも」と気がついてから、
「じゃあ、うちもやろう」となっても遅いのです。
結果として、市場のリーダー企業の座を奪われるわけですね。宿命的に。
既存企業のバイアス = イノベーターのジレンマ
上述の問題も、一見ガラっと変わって「これって破壊的?」思われたかもしませんが、全部持続的イノベーション(今までの機能をアップ、破壊的イノベーションではない)なのです。
❷破壊的イノベーション論の再構築
クリステンセンの「破壊的イノベーション論」を確認したところで、
次は先生の理論として「クリステンセンの破壊的イノベーション論を再構築する」という話に移ります。
大きく2つの概念について説明がありました。
①「部分代替」概念の必要性
クリステンセン理論は「完全代替」が前提でしたが、全部が全部「完全代替」じゃない。「部分代替」と呼べるものがあるよね?
ということです。
完全代替
例えば、ワープロ→パソコンになったり、フィルムカメラ→デジタルカメラは完全代替です。
部分代替
全部は無くならないのだけど、一部は代替品になっているものですね。完全代替への移行中のものも含んでいます。
例えば、紙の本、紙の新聞→電子書籍やデジタル新聞なんかが当てはまります。
ところで、
紙の本が電子書籍に完全に代替されるのはいつでしょうか?
これははっきりは言えないですよね。
(個人的には紙の本はなくならないで欲しい…)
こういう「先が見えない」部分が企業目線では怖いところで、ものすごいスピードで完全代替になってしまうことを既存企業は恐れています。
既存と新規を両方やらないといけないジレンマ
この移行期間が長いのも企業側には望ましくないときもあります。
例えば、「紙切符とIC」
個人的な意見ですが、
(a)思い切って「紙切符はもう対応しません!」と言い切ってしまう事業社が出てくる。
(b)マイナンバーカードが義務化し、マイナンバーカードで乗車するようになる。
なんてことにならない限り、なかなか完全代替は難しいのでしょうね。
②「プロセス代替」概念の必要性
例えば、新聞
作り方はデジタル化しているけど、製品はまだまだ紙が多いですよね。
いっきにやると消費者がついてこないのです。ここにもジレンマがありますね。
プロセスについては「効率化」という視点で積極的にデジタル化されますが、一方で製品・サービスのデジタル化の切迫度の見積もりは甘いようです。
❸既存業界の対応戦略はなぜ難しいのか
既存企業が破壊的イノベーションへの対応が遅くなる理由についてもう少し掘り下げてみましょう。
①制約を受ける
既存企業は当然、稼ぎ頭の既存ビジネスが大事です。そのための制約を受けてしまいます。
(a)既存ビジネスを維持しながら、徐々に変化したい
(b)既存ビジネスの資源を活用しながら変化したい
②組織が重い
組織は、宿命的に重くなってしまいます。
(a)安定するために官僚化する
(b)既存事業のために最適化されている
例えば、「本やタウン」
日本ではAmazonよりも早く書籍のWeb販売をしていたのですが、ご存知でしたか?(私はこのサービスを知りませんでした)
・書店で受け取ると無料!
・だけど、配送すると300円かかる
というサービスで開始しました。既存ビジネス(書店)を守る前提だったのでこのようなサービスだったのですね。
Amazonが無料配送に対応して、後追いで2,000円以上で送料無料をやったのですが、時すでに遅しです。
❹両利きの経営
ジレンマだとか既存企業の宿命だとか問題点がいろいろあることはわかりました。じゃあ、既存企業はどうしたらいいの?なにもできないの?
その答え(の一つ)が「両利きの経営」ですね。
①既存事業の深化
②新事業の探索
をにバランスよく資源配分するのです。
「新事業の探索」は、既存事業に引っ張られないようにする必要があります。
その対策として
独立した「スピンアウト組織をつくる」「企業内出島をつくる」
という案が先生から提示されました。
・同じ建物(敷地)に入れない
・制度を変える
など、いろいろやる必要があるのですが、実際はそれでもなかなかうまくいかないようです。
そう考えると、良さそうなスタートアップやベンチャーに投資したり買収したりする方が早いような気もしますが、講義でこの辺のことは言及がなかったですね。
ちなみに、Amazonは既存事業の深化と矛盾すること(例:中古のマーケットプレイス)を平気でやってきましたね。
矛盾はあるけど、探索を重視してきた。これが両利きの経営です。
『両利きの経営』読んでないので読んでみようと思います。
この記事を書いている「高橋ひろあき」とは?
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