【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第二章「性愛の山」 66
寺には、寺の法というもがある。
それは現世(うつつ)の権力が及ばない法である。
現世の理(ことわり)の外にあるため、これを頼って、法を犯した者たちや権力者の悪政から逃げてきた者たちが駆けこんでくる。
当然、追手がかかる。
だが、寺に入られたら終わりだ。
その者たちを捕まえるためとはいえ、たとえ将軍でも土足で立ち入るわけにはいかない。
寺に断りを入れ、寺のほうでこれを捕まえてもらうしかない。
が、大抵寺は、自らの法を重んじ、首を縦には振らない。
ならばといって