【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 103
二十九日、信長は上洛、未の刻(午後二時頃)に本能寺へと入った。
本来は、一度に妙覚寺に入るつもりであったが、なぜかすでに信忠がいたので、そのまま本能寺に入ることにした。
聞けば、『どうしても、狸退治の手伝いをしたい』とのこと。
「あの〝うつけ〟が、狸は儂と十兵衛で仕留めるというたのに。儂が神になる都合もあるのに、まったく………………、まあよい、三職のこともある、儂が神として復活すれば、すぐさま帝より太政大臣の宣下がおりようから、それを受けに行く手間も省けよう。その