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本業の合間に、小説を書いています。主に、歴史・時代小説が得意です。たまに、現代・恋愛小…

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本業の合間に、小説を書いています。主に、歴史・時代小説が得意です。たまに、現代・恋愛小説など書きます。 こちらにも投稿をはじめました ⇒ アルファポリス 電網浮遊都市 ⇒ https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/265934815

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  • 【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」

    「敵は本能寺にあり!」 天下取り目前の男、それを支える男、それを阻もうとする男、次の天下取りを狙う男、その流れに乗ろうとする男たち、そしてただ無邪気に男たちを弄ぶ少年………………その中で、ひとりの男を愛する少年は、その愛を昇華していく………………『本能寺燃ゆ』はついに佳境へ!!

  • 【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第四章「偏愛の城」

    愛する男のために、他の男の胸に抱かれる少年。その前に、現れた美少年。無邪気な彼の行動が、彼らの人生を狂わせていく………………。武士の野望と、少年の純愛、そして男たちの欲望が、渦を巻いて絡み合う。「燃える」三部作『本能寺燃ゆ』第四章「偏愛の城」、いま幕を開ける!!

  • 【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第三章「寵愛の帳」

    御山が燃える……、愛しい男に再開するための代償は、多くの命であった。それでも少年は、全てのものを犠牲にして、男に仕えようとする。心に晴れない何かがありながらも………………。男の野望と、少年の愛、そして武将たちの欲望が渦を巻いて絡み合う。「燃える」三部作『本能寺燃ゆ』第三章「寵愛の帳」、いま幕を開ける!!

  • 【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第二章「性愛の山」

    男は村を去った、「天下を取りに……」という言葉を残して。少年は、男のあとを追って、村を出る、男への愛を求めて。だが、彼の前に、幾多の困難が………………。武士の野望と、少年の純愛、そして男たちの欲望が、渦を巻いて絡み合う。「燃える」三部作『本能寺燃ゆ』第二章「性愛の山」、いま幕を開ける!!

  • 【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第一章「純愛の村」

    権太の村にひとりの男がやって来た。男は、干からびた田畑に水をひき、病に苦しむ人に薬を与え、襲ってくる野武士たちを打ち払ってくれた。村人から敬われ、権太も男に憧れていたが、ある日男は村を去った、「天下を取るため」と言い残し……男の名を十兵衛といった。 ーー 『法隆寺燃ゆ』に続く「燃ゆる」三部作のひとつ『本能寺燃ゆ』 男たちの欲望と愛憎の幕が遂に開ける!

最近の記事

【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』最終章「深愛の歌」(完)

 村の暮らしは、つまらない。  春秋とおして、田畑を耕し、米・作物を作り、年貢を納め、また田畑を耕し………………これの繰り返し、侍になって、暴れまわってみたい、美味い飯を食い、美味い酒を飲み、女と遊び………………そんな暮らしがしてみたい。  村の楽しみといえば、一年に数度ある祭りか、ときに来る行商人の都話ぐらい。  そんな行商人が、面白い話を仕入れてきた。  京での出来事らしい。  なんでも、天下を騒がした大泥棒が捕まったとか。  そいつは、身の丈六尺はある大男で

    • 【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 110(了)

       十兵衛とともに、勝龍寺に逃げ込み、ひとまず休むことにした。  十兵衛のために何か飯でも、なければ茶でもと思って御勝手を見たが、すでに先客がいた。  どうやら足軽のようだが、何をしているのか問うと、十兵衛に頼まれて食うものを探していたという。  十兵衛が?  誰もが疲弊し、腹の減っているときに、己だけ飯を食うようなことをしようか?  もしや、盗み食いしようとしていたのでは?  勝手な行動は、軍法で禁じられているはずだが?  問い詰めると、申し訳ございませんと頭を

      • 【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 109

         ―― 六月十三日 山崎  雨であった。  前夜には、円明寺川沿いに布陣。  十兵衛は、勝龍寺を背にした御坊塚に本陣を置き、その前に家臣団の斎藤内蔵助利三、藤田伝五行政、溝尾庄兵衛茂朝が陣を構え、 『前面の右翼には、伊勢殿(伊勢貞興(いせ・さだおき):旧幕臣)、諏訪殿(諏訪盛直(すわ・もりなお):旧幕臣)、御牧殿(御牧兼顕(みまき・かねあき):旧幕臣)、中央に阿閉殿(阿閉貞征・貞大親子)が、左翼は、柴田殿(柴田勝定(しばた・かつさだ))、津田殿(津田信春(つだ・のぶは

        • 【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 108

           六月九日未の刻(午後二時頃)、十兵衛は、内蔵助、伝五、庄兵衛らの一万の兵をもって京へと入洛。  吉田兼見からは、帝への上奏はできないが、兼見から誠仁親王への上奏はできるとの報せを受けた。  また、公家衆が出迎えにでるというが、これを断った。  吉田邸についた十兵衛は、帝、誠仁親王に銀子五百枚ずつ、京五山と大徳寺に銀子百枚ずつ、さらに兼見へも銀子五十枚を進上した。  この金を持って、兼見は誠仁親王のもとに向かった。  その間に十兵衛は、鳥羽に残っていた軍勢と合流し、

        【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』最終章「深愛の歌」(完)

        • 【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 110(了)

        • 【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 109

        • 【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 108

        マガジン

        • 【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」
          111本
        • 【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第四章「偏愛の城」
          112本
        • 【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第三章「寵愛の帳」
          119本
        • 【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第二章「性愛の山」
          79本
        • 【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第一章「純愛の村」
          77本
        • 歴史・時代小説 短編集
          143本

        記事

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 107

           兼見が、わざわざ安土にやってきた理由は、ひとつしかあるまい。  挨拶もそこそこに、話し始めた。 「東宮様より、預かって参った」  手には巻物が。  十兵衛は、これを押し戴いて受け取り、解いて目を落とした。  しばらく目を落としていたが、ぐっと眉間に皺を寄せた。 「子細は分り申したが……、これだけで?」 「麻呂はなかを見ておらぬので、なんとも申せぬ」  兼見は、眉ひとつ動かさずに答える。  太若丸と左馬助が、横から書面を覗き込む。 『惟任に、京の検非違使を

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 107

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 106

          「面目ない………………」と、内蔵助が頭を下げた、「弾正どころか、中将の首も見つからず」  二条や本能寺に僅かな手勢を残し、戻ってきた。  まだ捜索を続けているらしいが、本能寺は柱の一本も残らず焼失、二条新御所も戦火で焼け落ち、ごろごろと焼け焦げた死体は出てくるが、どれが信忠のものか判然としない。 「大将首が取れず、面目次第もござらん。こうなっては武士の恥、この皺腹かき切って………………」  伝五がいまにも腹を切りそうなので、庄兵衛が慌てそれを止めた。 「ここでご老体

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 106

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 105

           本陣は物々しい様子で、兵士たちも殺気立っていた。  左馬助らの姿を見ると、みな駆け寄り、 「首尾は?」  と、興奮した顔で訊ねた。 「上々!」  その言葉に、誰もが喜んでいた。  陣幕に入ると、十兵衛は床几に座していた。  目を瞑り、両手は腹の前で『法界定印』を組んで、まるで高名な禅僧のように、静かに座禅を組んでいた。  周辺の喧騒が嘘のように、陣幕のなかは耳が痛くなるほどの静寂で、ときどき弾ける松明の音だけが異様に響いていた。 「十兵衛、やったぞ!」

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 105

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 104

           太若丸が、片付けを終えた後に寝所を覗くと、信長と乱があられもない姿で抱き合いながら寝息を立てていた。  よく寝ている………………何時か?  もう子の刻を回ったろうか?  耳を澄ましても、風音さえしない。  そっと信長の顔を覗き込む。  あと少しで、この首が飛ぶのだ。  長年見てきたこの首が。  そして今日こそ、太若丸は十兵衛のもとへ飛び立てるのだ。  長かった………………十兵衛に言われて、信長のもとについたが、あまりにも長かった。  長すぎて、一生このまま

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 104

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 103

           二十九日、信長は上洛、未の刻(午後二時頃)に本能寺へと入った。  本来は、一度に妙覚寺に入るつもりであったが、なぜかすでに信忠がいたので、そのまま本能寺に入ることにした。  聞けば、『どうしても、狸退治の手伝いをしたい』とのこと。 「あの〝うつけ〟が、狸は儂と十兵衛で仕留めるというたのに。儂が神になる都合もあるのに、まったく………………、まあよい、三職のこともある、儂が神として復活すれば、すぐさま帝より太政大臣の宣下がおりようから、それを受けに行く手間も省けよう。その

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 103

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 102

           家康が大坂へ向かったあと、 「それで、弾正の上洛は?」  真田八郎がやってきた。  上洛は二十九日である。  安土本丸の留守居役として、織田信益を筆頭に賀藤兵庫頭(かとう・ひょうごのかみ)、野々村又右衛門(のむら・またえもん)、遠山新九郎(とおやま・しんくろう)、世木弥左衛門(せき・やざもん)、市橋源八(いちはし・げんぱち)、櫛田忠兵衛(くしだ・ちゅうべえ)が、二の丸御番衆に、蒲生賢秀、木村高重(きむら・たかしげ)、雲林院祐基(うじい・すけもと)、鳴海助右衛門(なる

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 102

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 101

          「羽林殿、昨夜は存分に楽しまれたかな?」  翌朝、信長の意味ありげな問いに、 「はぁ……」  と、家康は生返事。  不信に思ったのか、信長は太若丸を見る。  太若丸はにこりと頷く………………ここで、何もしていないと首を振れば、信長の接待を断ったということで、家康は不利な立場に陥るだろう………………今夜のために、借りを作っておくか。 「それは良かった。太若丸は天下一の床上手じゃ、今夜も存分に楽しまれい」  家康は目を瞬かせていたので、笑いそうになった。  裏で十

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 101

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 100

           五月十五日、徳川家康と梅雪斎が、安土に到着。 「狸め、何も知らずにのこのことやってきおって」  信長は、酷く楽しそうであった。 「これはこれは羽林殿、遠路遥々ご足労いただき忝い」  信長は、まるで朝廷の勅使のように丁重に出向かる ―― この人は、こういう演技が上手い。 「右府様自らのお出迎え、痛み入りまする」  家康は深々と頭を下げる ―― 殺そうとしている相手にこの態度………………家康も、よき役者だ。 「梅雪斎殿も、ご苦労であった」 「お召いただき、恐れ入

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 100

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 99

           かくいう十兵衛は、信長ともに、家康饗応の仕度をしている。  信長は、中途半端だと家康に気づかれるからと、豪勢にしようと張り切っている。  三職推認の一件も、下ってきた上臈衆らに、息子たちがすべて受けるという返書を持って帰らせ、これで天下は織田家のものと上機嫌で、 「狸の最期じゃ、豪勢に送り出してやろうではないか」  と、気合の入れよう。  そのせいで十兵衛は、京へ堺へと、品物を仕入れに大変なようだ。  家康の饗応は、直接に本能寺ではなく、一度安土でするらしい。

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 99

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 98

           が、十兵衛は、織田家のなかで最も使えるのは、 『羽柴殿でしょうね』  とも、太若丸に語っていた。  昨夜、本能寺が思い浮かんだあと、十兵衛と今後の策について話し合った。  もちろん、狸退治などのためではないが………………太若丸は、いっそのこと家康も葬ってはと言った。  十兵衛が天下をとれば、誰がついてこようか?  ―― 柴田勝家はどうか?  十兵衛は首を振る。 『柴田殿は織田家の直参、自ら天下取りに動こうとはしまいが、主を失えば、別の主を担いで織田家の再興を

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 98

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 97

           十兵衛は、そのまま坂本へ戻ると言っていたが、秀吉からの報せに足止めをくらった。  甲斐への進軍を見計らうように、毛利も動いた。  毛利勢の穂井田元清(ほいだ・もときよ)が児島へと侵攻、これを守るために宇喜多基家が出陣したが討ち死。  大将を失ってしまった宇喜多勢であったが、何とか八浜で食い止めた。  基家は、宇喜多家先代当主直家(なおいえ)の養子となり、十歳になったばかりの現当主秀家(ひでいえ)の名代を務めるなどの、行く末を嘱望されていた。  その基家を失ったのだ

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 97

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 96

           躑躅ヶ崎を立って、笛吹川を渡って右左口へ、右左口から女坂をあがって本栖へ、本栖から浅間神社へと入ったが、道中、川には立派な橋がかけてあり、道も草木を刈り開き、要所要所に休憩所が設けられ、酒や肴が用意され、陣屋も立派なものが建てられ、二重三重にも柵や堀で囲まれ、お供のものにも大層なごちそうが振舞われていた。  聞けば、家康の指示であるらしい。 「いやいや、儂のために斯くも素晴らしき仕度をしてもらい、羽林(家康)殿には感謝してもしきれぬな」  と、殿は酷く上機嫌だったが、

          【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 96