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経験を抽象化することについて学ぶ(孫子とUMLの接点)

こんにちは。

 今回の記事は、UMLというモデリング言語を学ぶなかで思いがけず出会った認知心理学的な視点が孫子の思考回路を探る手がかりになるかもしれない、という、勝手な気づきを文書化したものです。

 多分に憶測に基づくものですので、あらかじめご容赦ください。そして東洋思想にご興味のある方には縁遠い内容が主体となるかもしれません。

UMLとは?


 冒頭にUMLというアルファベット三文字を書きました。ソフトウェア業界の方はご存知の方も多いと思いますが“Unified Modeling Language”の略称で、ソフトウェア開発においてユーザーエクスペリエンスを抽象化しモデルとして記述する方法論をまとめた標準言語のことです。

 平たく言うと、ソフトを開発するにあたって、どのようにソフトが動作して、何をしてあげればユーザーの要望通りになるか、を、物語としてわかりやすく示す、お絵描きのツール、ということになるでしょうか。
 お絵描きではありますが、学ぶほどに奥が深いものだと感じます。

物事を抽象化する


 UMLを本格的に学ぼうと思い立ち、まずは記述ルールを学ぼうと「UMLモデリング入門」(児玉公信)という書籍を購入しました。

 ごく単純にテクニックとして、UMLのルールを学ぼうと思っていたのですが、そもそもモデリングとは何か、という大前提についてイントロダクションで丁寧に説明されており、そしてそれが人間行動学、認知学に基づいて考えられた概念であることを知りました。

「類似性と近接性:人間の認知の特徴について」


 「物事の抽象化」は、人間が生きていく上で頭の中で自然に行っている活動です。それを認知心理学的な概念として解説、図示したのが「類似性と近接性:人間の認知の特徴について」(楠見孝、人工知能学会誌, vol.17.no1,2-7,2002)になります。

 これによると、人間は自らが経験した出来事を「知識」へ変換する行為は次の図に概念化される、としています。



ようやく「孫子の兵法」 


最後にようやく、孫子について考察してみます。

 上述の抽象化を、孫武は自らの実体験を体系化する際に脳の中でおこなっていたと推察します。国政や戦争で起こった事象(インスタンス)を概念化して、帰納法的にプロトタイプを描きます。そしてさらに抽象化することで普遍的な理論にまで昇華させた。
 そんな気がするのです。

ゆえにこれを経るに 五事 をもってし、これを校ぶるに計をもってして、その情を索む。一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法なり。
道とは、民をして上と意を同じくし、これと死すべくこれと生くべくして、危きを畏れざるなり。天とは、陰陽・寒暑・時制なり。地とは遠近・険易・広狭・死生なり。将とは、智・信・仁・勇・厳なり。法とは、曲制・官道・主用なり。
 (孫子の兵法 計篇)

例えば下の計篇の冒頭にある「兵(戦)」の5つのエッセンスは「道、天、地、将、法」であるとしています。
 この順番にも意味があります。きっと孫武の頭の中には戦というインスタンスからこの五事を頭の中で抽象図として昇華し、それをアウトプットとして言語化したのだろうと思います。

 いずれUMLで記述してみたいな、と妄想してしまいます。

ではまた!

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