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自動車業界「100年に一度の大変革」の表現のウソ?:日本経済新聞の記事から学ぶ、今後の自動車業界の最新動向
一部マスコミ等の表現で「自動車業界は100年に一度の大変革期」と勝手に騒いでいるように思えます。いったい何を伝えたいのでしょうか?私にこのメッセージの真意は分かりません。
最初期のモデルであるフォードT型(GAZOOホームページより引用)は約100年前の1908年に登場。日本に大衆車が普及したのは第2次世界大戦後。このような自動車産業の歴史の中で、「100年に一度」と言われても、歴史自体が100年程度で短いので、いまいち良く分からないのが正直なところ。「100年に一度」って、地震・災害にも使われる言葉で、自動車産業の再編にも使うのは何だか無駄に不安を煽るように感じるのは私だけでしょうか。
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むしろ今の日本の自動車業界は、完成車組立メーカをピラミッドの頂点に、非常に裾野の広い一大産業です。従業員家族など入れるととても大人数。例えばPRするシーンこそ異なりますが、新明工業株式会社の採用ページでは”全就業人口の1割が自動車産業関連”とインパクトのある図を使用しています。
このような人口指標に訴求するイメージで、例えば内燃機関のエンジン車の廃止によって受ける影響人数等を示した方が、事の深刻さが伝わるのでは。しかも今のピラミッド構造も将来的に変わってくると予想されます。今後も自動車関連記事を丁寧に読み解く必要がありそうです。
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先週、2022年10月12日(水)と15日(土)の日本経済新聞の記事で興味深い記事を見つけました。『エンジン部品製造の山田製作所、高級魚の陸上養殖参入へ』2022年10月12日(水)と『中古軽トラ、米国走る』2022年10月15日(土)の2記事です。
自動車のビジネスと「需要」と「供給」に分け、下図のように市場を「既存」と「新規」に分けたマトリックスにあてはめてみた場合、EV化に向けた競争は、需要サイドも供給サイドも「新規」。「異次元の競争」であることは容易に想像できます。(私も含めてですが、)現実を良く分かっていない経済アナリストや自動車評論家が、EV化に向けた競争の記事を書くにも、中々本質に迫るのは難しいのではと考えています。とりあえず「自動車業界は100年に一度の大変革期」と適当に茶を濁して、読み手の不安を煽っていただけかもしれません。
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EV化競争の記事から本質を見つけるのが難しいですが、需要サイドや供給サイドのいずれか既存市場だったらどうでしょうか?EV化競争の記事のように「異次元の吹っ飛んだ記事」よりも、まだ腑に落ちやすく、しかも近未来を想像できるのではないでしょうか?
この視点で、日本経済新聞の記事『エンジン部品製造の山田製作所、高級魚の陸上養殖参入へ』2022年10月12日(水)と『中古軽トラ、米国走る』2022年10月15日(土)の2記事を紹介し、予備知識も含めて、じっくり解説していきます。
1.「ポンプで魚養殖」とは?
日本経済新聞の記事『エンジン部品製造の山田製作所、高級魚の陸上養殖参入へ』2022年10月12日(水)の紹介と解説をします。
でもその前に、何で「自動車業界にポンプ?」と疑問に思われた方もいらっしゃるのでは?そこで簡単に今のエンジンで動く自動車の構造について説明します。
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上図④のように、エンジン周りに「オイルポンプ」や「ウォーターポンプ」等、自動車には複数のポンプが組み込まれていることが分かります。
もう少し掘り下げてみましょう。
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補足までに、エンジンの潤滑装置では、オイルポンプでエンジンオイルを各部に圧送しています。トランスミッションにもオイルポンプが備えられていることが多いため、「エンジンオイルポンプ」と表現している場合もありますが、自動車関連で単にオイルポンプと言った場合、エンジンの潤滑装置のモノを指すのが殆どみたいです。(青山元男『クルマのメカニズム』ナツメ社、2018年9月10日、136ページを参照)
次に「ウォーターポンプ」を見てきましょう。
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エンジンは燃焼・膨張行程で発熱します。この熱でエンジンが過熱状態になることをオーバーヒートと言い、ノッキングなどの異常燃焼の原因になります。エンジンオイルの能力も低下し、過熱が進むと部品の変形や溶解が起きます。このためエンジンには冷却装置が備えられており、「ウォーターポンプ」を使用しています。(青山元男『前掲書』139ページを参照)
以上のように、エンジン部品の一部であるポンプのノウハウを有する山田製作所。電気自動車(EV)化が進めば、同社の主要製品は需要減少が見込まれ、新たな分野への参入で将来的な収益源の確保を図るとのこと。そこで高級魚の陸上養殖を始めた同社は、自社技術を応用した水の循環やろ過システムで大量の給排水を必要としない閉鎖型環境を構築、2024年度の事業化を目指す、としています。
ひょっとしたら山田製作所のようなエンジン部品メーカーの新事業進出は将来の「経営学のモデルケースになる」かもしれませんね。
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では山田製作所の記事の最後に、新規事業の参入の背景と今後について記載されていますので、記事をそのまま引用します。
同社が陸上養殖に参入したのは、自動車産業のEVシフトへの懸念からだ。同社はホンダ向けを中心にオイルポンプなどエンジン部品を主力とする。売り上げの80%弱をホンダが占めるというが、ホンダは40年に全ての新車をEVか燃料電池車(FCV)にする方針を掲げている。
エンジン部品はEV化によって需要減少が見込まれ、同社は「検討する余力があるうちに事業の方向性を模索しておくというのが社の方針」(山根部長)だという。新規事業の立ち上げを狙い、社内ベンチャー事業を募集し、その一つが陸上養殖だった。
同社は24年度の事業化を目指しており、その前に試験販売も検討しているという。人工海水を使い、管理された飼育環境で養殖された魚は寄生虫の心配がなく、生でも安心して食べられる。渡辺氏は「魚の安全性や安定供給のニーズに応えていきたい」と語る。
2.「中古軽トラ米国走る」とは?
では次に、日本経済新聞の記事『中古軽トラ、米国走る』2022年10月15日(土)をご紹介します。まず記事の冒頭をそのまま引用します。
排気量の小さい日本独自規格の軽自動車が米国で人気になっている。小ぶりでかわいらしい外見や燃費のよさが受け入れられ、様々な形で使われる。製造から25年経過した車は安全や環境の基準を満たさなくても輸入が認められる米国でのルールが追い風。1990年代に造られた中古の軽トラックにまで熱い視線が注がれている。
米国では本来、安全や環境の基準に適合しない車は輸入できませんが、製造から25年を経たものは可能になるとのこと。通称「25年ルール」と呼ばれています。
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3.まとめ
当記事では、一部マスコミ等で勝手に騒いでいる「自動車業界は100年に一度の大変革期」の意味を問題提起をして、EV化競争の記事から本質を見つけるのが難しいことを指摘しました。
そして見方を変え、需要サイドや供給サイドのいずれか既存市場だったらどうか、EV化競争の記事のように「異次元の吹っ飛んだ記事」よりも、まだ腑に落ちやすく、しかも近未来を想像できるのではと提起し、下図⑭のマトリックスをご提案しました。
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上図⑮のマトリックスの視点で、日本経済新聞の記事『エンジン部品製造の山田製作所、高級魚の陸上養殖参入へ』2022年10月12日(水)と『中古軽トラ、米国走る』2022年10月15日(土)の2記事を紹介・解説してきましたが、読者の皆さんが今後の自動車関連ニュースを読まれる際、この記事紹介が何かの気付きになれば嬉しいです。
表紙のホンダシビックタイプRの写真はPixabayからお借りしました。
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<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>
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