【エッセイ】年末、何がめでたい?
「今日ぐらい、休んだらどう?」
年末になると、決まって声をかけられる。
特に休む理由は見当たらない。
大学時代はテストに追われた。
社会人になってからは予備校勤務で、元旦さえ仕事だった。
実家にも、「おせち」や「初詣」の習慣がない。
めでたいと浮かれる年末年始は、いつもどこか他人事。
正月は、ただの日常でしかなかった。
そもそも「休む」という言葉が、しっくりこない。
幼い頃からじっとしていると落ち着かない。
「この時間を何かに使えたはず」
自分を責め続けた。
誰よりも先に進みたいし、負けたくない。
圧倒的な負けず嫌いが脅迫観念のようにまとわりく。
「倒れることさえ許されない」
“休まない”ことのダメージも大きい。
大事な人と過ごす余裕はなくなり、心の疲弊を重ねる。
適応障害、うつ、対人恐怖症。
立ち上がり続け、「休まない自分」を維持してきた。
意地だったのかもしれない。
休むのが苦手な私が誕生していた。
でも、今年は少し違う。
「もう少しだけ、ゆっくりしてもいいんだよ」
言えるようになった。
きっかけは、今年出会った社長からの一言。
「あなたと一緒に仕事をしたい。」
苦悩や葛藤を理解し、正面から受け止めてくれる。
休めない心に小さな“ゆとり”が生まれた。
・・・
「自分のために生きていいんだよ」。
「誰かのために動きたい」という気持ちが強い。
自分のためになんて、生きられない。
裏切られたこともある。
後悔だって、ある。
けどね。
どんな形であれ、だれかを信じて努力した結果は
かけがえのない「過去の自分」として残っている。
こんな生き方でもいいんだよって、背中を押してくれる。
テレビやネットが年末ムードで盛り上がるこの時期。
「何がめでたいの?」
素直に乗れなかった私に「よく頑張ったね」と声をかける。
盛大な行事ではない。
でも、心の中で「めでたい」と言える瞬間がある。
誰にも邪魔されない小さな休息と安心。
それが本当の「めでたさ」だと思う。
「走り続けるか」「休むか」
悩む人がいるなら、どちらを選んでもいいんだよと伝えたい。
大事なのは自分の心が納得しているかどうか。
疲れたときに立ち止まれるだけの優しさを
向けてあげてほしい。
「何度落ちても大丈夫。」
飛びたいと思えば、自分の力で舞い上がれる。
そこには必ず、折れない翼があるのだから。
「翼を広げるまでは、どれだけ遠くへ飛べるのかわからない」
~ナポレオン・ボナパルト~