HSK19 - チップの行方
ホテルの客室の掃除をしていると、チェックアウト、使用中にかかわらず、チップをいただく場面に遭遇します。
大抵はコインが置かれているのですが、時にはゲストから直接お札を渡される人もいて、20ドル札をもらったスタッフがロッカールームで騒いでいる、なんてこともありました。
客室の掃除は、毎日同じ場所を同じスタッフが担当するわけではないので、部屋にチップが残されていたとき、前日は自分の担当ではなかったということは多いです。
チップに関しては、その日受け持った部屋に置いてあれば、その日の担当者がいただきました。
この辺りはみんな持ちつ持たれつですから、
「あの部屋、今日もチップ置いてあったでしょ。私は昨日もらったよ。ラッキーだったね。」
という感じで、「その部屋は前日私が掃除したんだからよこせ」という人には会いませんでしたし、特定スタッフの名前が書いてある場合は、その人に渡すようにしていましたよ。
しかし一度だけ、明らかにチップが消えてしまった部屋がありました。
一旦入ったチェックアウトの部屋にチップのコインがどさっと置いてあったのを見ていたのですが、あとで改めて掃除のためにその部屋に入ったらコインが消えていたんです。「THANK YOU」メモも一緒に。
5セント硬貨が数枚、散らばっているだけでした…。
「もらえる♪」と事前に思っていたので、ガクッとなりながら掃除をしました。
途中、その部屋に出入りをした他部署のスタッフを見ているので、その人が持って行ったのだと思いますが、悩みました。
『そもそもチップは、ハウスキーピングスタッフのためだけのものなのか?』
基本的にゲストが部屋にチップを置いていくとき、掃除スタッフに渡ると想定されているだろうけど、では今回の場合、私が文句を言うような類のものなのか?
別部門のスタッフも、同じようにゲストのためにホテルの仕事をしているわけだから、チップをもらう権利があるだろう。
私の名前が書かれていたわけでもないのだから、私のものというわけではない。
また、先にこの部屋に入っていなければ、チップがあるとは知らなかったわけだから、はじめからなかったと思えばいい。
時給をもらった上での話なので、割り切らないとみっともないなあ。
しょうがない、って自分の感情を落ち着かせて終わりました。
今回のように、「こうなるだろう」と思っていたことがそうならずに着地する時って、感情が一旦
うわっ!
てなりませんか?
物事が思い通りにならなかった時に感じるエネルギーって、案外強いと思います。その強いエネルギーの持っていき場所がなくなってうろうろしちゃう感じ。
この時、私はこのエネルギーを落ち着かせる経験ができたのかなって思いました。
他の国ではハウスキーピングなどは低時給で、チップを足しにしてやっと生活ができてるという話を聞いたことがありますが、オーストラリアは世界で一位二位を誇る最低賃金の高い国。
この時、最低賃金よりはいくらか高い時給で働いていましたから、めくじらを立てる話でもなかったのですが、ともあれ良い経験をさせてもらったと思います。