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電脳虚構#9 | イッツ・ア・スモールワールド

Chapter.1 ジオラマの世界


私はある実験をしていた。

この1m四方の「エデンの園」のジオラマは様々な文献を調べ、精巧に作ったものだ。

中央に植えた「知恵の樹」も本物のリンゴの木から生成したもの。
草木、地層、山や海、生物、風、光、この世界に呼応する生きる全ては、嘘偽りのない確かな生命だ。

この米粒ほどのアンドロイドも、ヒトの細胞から培養して作ったものだ。
自我があり、呼吸をし、生殖機能だってある。

男女のアンドロイドを一体ずつ作り、アダムとイヴという名前をつけた。
そしてジオラマの中に放した、小さな世界だがこれぞ「天地創造」の瞬間だ。

この創造された世界のジオラマは実物とARの融合で造られている。

時間の早送りや巻き戻し、災害や反乱を意図的に起こしたり、天変地異や歴史の改ざんなど、ありとあらゆる操作が可能なのである。

私はこの「小さな世界の創造主」。言わば「 神 」だ。

アダムとイヴを世界に放し、しばらく経った頃。
予定通りにヘビにそそのかされて「禁断の果実」を手に取った。

そこからの人類の発展は早かった。

ジオラマ内にある様々な資源を利用して、こちらが操作しなくても勝手に衣食住を確立し、集落が生まれ、そして文明が栄えた。

米粒ほどの「人類」は瞬く間に100人、1000人と増えていった。

もちろん人口の増加や、科学の発展により行動範囲を広げようとする人類に”1m四方の世界”では足りない。

私は世界の拡張を何度も行った。

小さな世界の人類もやはり愚かだった。
領土、資源、権力、宗教などあらゆることで争い、殺しあった。

何度か時間を撒き戻して、争いや・反乱の首謀者を殺してみたが、そのたびにまた別の首謀者がでてきて結果はそうは変わらなかった。

歴史はくり返す、おかしなくらいに現実の世界と同様の道をこの小さな世界も辿っていた。




Chapter.2 プログラムの世界


俺はある実験をしていた。

このプログラムの「エデンの園」は様々な文献を調べ、膨大な量の情報を基に精巧に作ったものだ。

アダムとイヴを定義し、繁栄させるよう綿密なアルゴリズムを組んだ。
言ってみりゃ「天地創造」ってやつだ。

そこから独自のプログラムを走らせ、自動でこの「プログラムの世界」が勝手に構築されていくようにした。

時間の早送りや巻き戻し、災害や反乱を意図的に起こしたり、天変地異や歴史の改ざんなど、ありとあらゆる操作が可能なシステムを組んだ。

俺はこの「プログラムの世界」の言わば「 神 」だ。

数々の実験や検証を行い、この小さな世界の人類を細かく観察しながら、ようやく世界は「現代」まで追いついた。

すると「ある面白いもの」を見つけた。

この小さな世界に大規模なジオラマを作り「ジオラマの世界の神」として実験を行ってるヤツだ。

俺と同じ思想のヤツが、この小さな世界にもいるなんて面白いじゃないか。

自分が「ただのプログラム」だってことも知らないで「神」になったつもりとは愚かなものだ。

「本当の神の力をみせてやる」

俺はその「小さな世界」の神を、プログラムから- Delete(消去) -した。




Chapter.3 ゲームの世界


僕はあるゲームをしていた。

そのゲームは「エデンの園」という名前で、アダムとイヴの「天地創造」から始まり、人類を繁栄させ、世界を構築していくシミュレーションゲームだ。

時間の早送りや巻き戻し、災害や反乱を意図的に起こしたり、天変地異や歴史の改ざんなど、ありとあらゆる操作が可能な自由なゲーム性だ。

プレイヤーは「ゲームの世界」の言わば「 神 」だ。

長い年月プレイして、ようやく現代まで追いついた。

すると「ある面白いもの」を見つける。

この小さなゲームの世界の中に、もうひとつ「小さなプログラムの世界」を作り、その世界の「 神 」として悦に浸ってる人だ。

自分が「ただのゲームの一部」だってことも知らないで「神」になったつもりだなんてなんか笑える。

「本当の神の力をみせてやる!」

僕はその「小さな世界」の神を、ゲーム内から- Delete(消去) -した。



Chapter.4 ループする世界


ぼくはある絵を描いていた。

「エデンの園」の天地創造から始まり、世界が創造されていく絵だ。

ぼくの考える世界。創造の世界は自由。
絵を描いているとき、そのときだけは僕はこの世界の神さまなんだ。

創世記からずっと描き続けて、さぁ「現代」は何を書こう・・と、とっても悩んだ。

試しに「ゲームをしている少年」を描いてみたがいまいち気に入らず、上から白い絵の具で塗りつぶした。




わたしはある小説を書いている。

「天地創造」から始まり、その世界の中で何重にもループする「小さな世界」の話だ。

小説家というのは、自分のイマジネーションを文字に変えて、世界を自由に創造していく。

この「世界を描いている画家の少年」その未来。その行く末、生死だって思うがままだ。

執筆をしているこの瞬間、わたしはこの世界の「 神 」なんだ。



この「ジオラマの世界」も、ようやく現代にまで追いついた。

すると「ある面白いもの」を見つける。

小さな世界のほんの一部で「note」という文章に特化したSNSが流行っているらしい。
その「小さなSNSの世界」で「 神 」を気取って執筆を行ってる小説家たちだ。

自分が「ただのジオラマの一部」だってことも知らないで「神」になったつもりとは愚かな連中だ。

・・ほら?いま、これを読んでるあんたのことだよ。

よし・・


「本当の神の力をみせてやる!」


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