【愛着障害】『愛着障害は何歳からでも必ず修復できる』◇まとめ その2【大丈夫】
本書のまとめの2回目です。今回から,「第1章 愛着障害と聞いてどんなこどもを想像しますか?」に入っていきます。
目次が書いてある1回目の投稿のURLを載せておきます。全体像を把握する場合は,こちらからどうぞ。
「愛着障害とは,特定の人との関係性ができていない『関係性の障害』であり,人との間の愛着形成不全の状態と考えることができます。」(p.12)
この第1章では,「愛着および愛着障害とはどのようなものか」ということや,その発症の原因について書かれています。
今回は第1章の中の,1,と2,までを読んでいきましょう。
第1章 愛着障害と聞いてどんなこどもを想像しますか?
1,愛着障害について考える際に大事な視点
前回も書きましたが,「愛着障害」は,共通の理解がなされていないために,これまで様々な誤解を受けたり,有効ではない治癒法が行なわれてきた経緯があります。
そのため,著者の述べる「愛着」および「愛着障害」について,この章でできる限り,理解を深めておきたいと思います。
まず,私たちが「愛着障害」と聞いて,「どのような子を思い浮かべるか」ということを著者は尋ね,例を3つ提示します。
そのうちの1つが,『スーパーに入ると走り回り,親に「これ買って」と訴え,買ってあげたのに「これも買って」とねだる(p.8)』というものがあります。
私たちが買い物に行くと,よく目にする光景です。(先にお伝えしますが,この行動に当てはまる子すべてが「愛着障害」というわけではありません)
そして,これに似た行動が,大人でも見られると著者は述べます。
そのうちの1つが『あおり運転をする(p.9)』というもの。
ここで少不思議に思われる方もいらっしゃるでしょう。「子どものわがままに見える行動と,犯罪であるあおり運転が“似ている”ってどういうこと?」
これについて,著者は次のように説明します。
「このような行動は共通して,相手の気持ちや存在に対する認識を欠いており,自分本意の行動のように見えます。愛着障害はこどもの時期だけに現れる行動ではなく,成人になってからも愛着障害が疑われる行動をする人たちがいます」(p.9)
ここで重要なのは,行動が「相手の気持ちや存在に対する認識を欠いて」いるという点です。スーパーでの子どもの行動の例も,あおり運転の例も,行動を行なう人間が子どもと大人という違いこそあれ,「自分以外の相手がいて,相手も自分と同じように『気持ち』や『考え』がある」という認識がない行動である,という点で同じものである,と著者は述べています。
また,上記の点から,「愛着障害」は子どもの時期のみではなく,成人してからも,人間関係や人生に大きく影響することがわかります。
加えて,「愛着障害」とされている子どもの数は,著者のこれまでの様々な場所での経験(園や学校,特別支援学校,児童養護施設などの福祉施設)から,全体の30%以上であると推定されています。
1,の最後に,著者による「愛着」についての重要な特徴3点をまとめておきます。
①愛着とは「特定の人と結ぶ関係」である。
②「特定の人」とは「親」とは限らない。
③人間同士の絆は気持ちや感情でつながる「情緒的」なものである。
(p.10)
2,愛着障害はどのような原因で起こるのか?
ここまでの話から,「愛着障害」を端的に「『特定の人と結ぶ関係』である気持ちや感情でつながる『情緒的』な絆が結べないという障害」(p.11)であると示しています。
「愛着障害」が起こる原因について,著者は,次のように述べています。
「発達過程の中で情緒や感情の基盤が育っていると,『謝る』『満足する』『やってみよう』という行動が取られますが,愛着障害のこどもには,そのような行動が一様に見られないのです。こどもの情緒,感情が育つ基盤が愛着の絆なのですが,それができていなかったからなのです。愛着障害は『感情発達の障害』と言えるのです(p.13)」
愛着障害の子どもたちは,何らかの理由で「特定の人との間」に「情緒的な絆」を結ぶことができないまま成長してきた人間の状態で,著者は別の言葉で「愛着形成不全」と言っています。なぜ,愛着形成不全になってしまうのか,その要因等については,後の章で触れます。
さて,この1,2,で重要なポイントは,著者の述べている「愛着障害」の理解として,次のことを知っておくということです。
●「愛着障害」は,「(親とは限らない)特定の人と気持ちや感情でつながる情緒的な絆を結ぶことができないまま成長してきた『愛着形成不全』の状態で,『感情発達の障害』」である。
●「愛着障害」が適切に治癒されないまま大人になると,相手の気持ちや存在を無視しているような行動を取るようになってしまう場合があり,社会に出てからの人間関係や人生に大きな影響を及ぼす。
少し短いかもしれませんが,今回はこれで終わりましょう。
次回は,第1章の3,と4,を読んでいきましょう。