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お米をテーマにモノを売ることについて考える(1)~不安に寄り添って

お米屋さん、こんにちは。今日から少しずつ、食卓からあなたにお手紙を書きます。お仕事の合間に読んでくださったら嬉しいです。

わたしは誰かって?失礼しました。お米サービスデザイナーのたにりりと申します。お米のワークショップや料理教室、米穀店や行政のサポートなど、お米のある食卓から毎日をよりよくする活動をしています。2019年には「大人のおむすび学習帳」という、おむすびをテーマにした食の楽しさを再発見する本を出版しました。

さて、昨年から避けて通れない問題といえば新型コロナウイルス。ご存じのように昨年(2020)の3月は、マスクのみならず食料品まで買いだめ騒動が起きました。

そのとき、わたしの友人もスーパーに走りました。休校になった子どもの昼食用です。彼女が出先から
「冷凍食品もカップ麺もないのよぉ!」
と電話をかけてきました。わたしはまず「落ち着いて」といいました。
「お米があれば、おむすびが作れるでしょう?」
「そうか、冷凍もできるわね。お米を買わなきゃ。売り場は…ええっ、売り切れ!どうしよう」

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日頃、お米は余っていると聞かされている消費者にとって、これほどショックなことはありません。最悪でも備蓄米があるなどと頭を働かせる余地もない。消費者にとっては、見える景色がすべてなのです。

彼女には、近くのお米屋さんへ行くように言いました。後日、彼女からメールが届きました。
「買えました。ありがとう。初めてお米屋さんへ行ったけど、すごく優しかった。お米は無くならないから安心しなさいって。家には三週間分もあれば十分らしい」

ここでのポイントは、お米屋さんが彼女の話を聞き、不安を解消させたことです。実は彼女は対面販売が苦手なのです。ダダダーッと一方的に話されるのではないか、買わざるを得ない雰囲気になるのではないか。そんな恐怖感があるというのです。

ところがこのお米屋さんは、彼女の不安に寄り添いました。つまり、彼女が買ったのはコメという商品ではなく、会話という体験を通じた安心感だったのではないでしょうか。

インターネットショッピングが盛んなアメリカでは、ずいぶん前から小売業の崩壊危機が叫ばれています。そんな中、最近は実店舗への回帰が始まっています。顧客が求めるものに耳を傾ける、言い換えれば、お客さんの心に寄り添うということです。心を掴まれたわたしの友人は、今後もあのお米屋さんに買いに行くに違いありません。

次回は「コメを選ばない消費者事情」を考えてみたいと思います。それではまた、ごきげんよう。


~たにりり(お米サービスデザイナー・商経アドバイス契約コラムニスト)
「料理がわかるごはんソムリエ」として、お米に携わっている人・毎日お料理する人を応援しています! ◆著書「大人のおむすび学習帳」

※このコラムはお米の専門新聞「 商経アドバイス 」2020年3月19日号に掲載されたものを一部改編して掲載しています。最新号はぜひ購読してお読みください。お米屋さん向けに書いていますが、農家さんなど直販生産者やお米以外のモノを売っている方にも、何かしらのヒントになると思います。よかったらどうぞ続けて読んでくださいね。

※題字とイラスト:ツキシロクミ


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