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【オーダーメイド物語】誕生日の物語#11

ミルクをとかしたかのようなまろい碧に満ちた森の中を、バスケットに詰めた花蜜パイを手土産にして歩く。
『精霊の社』へと続くこの道々は、白い花が甘やかに香り、時折、楽しげな歌まで聴かせてくれて心地いい。
思わずこちらも歌で返しながら、迷うことなく『迷いの森』を進んでいった。

そもそも人の身で精霊の相談役にと望まれたのは、ささやかな偶然の賜物だった。
邪気も悪意もなく遊びに来ては結界をイタズラに乱していく神子のせいで、社が現世に顕となり、困り果てていた精霊たち。
いくら静止しても聞かない所業と、もたらされる災いに頭を抱え、途方に暮れていた彼らへと、結界の綻びからそこへ迷い込んだ私が、『対策』を提案したのがすべての始まりだった。

「君を招くよ」「あなたは僕たちの救いの主だ」「これからもどうか力を貸して」

そうして差し出されたのは、精霊たちがその力を分けて作り上げたハナビシソウの枯れない花飾り。
位相を違える神の領域へと、現世から一切の代償なく立ち入ることを許された証。
それを身につけ、ご機嫌であの御神木を越えれば、愛らしい笑顔の彼らが待つ社まであともう少し。

*誕生石・誕生日花*
アメジスト:高貴・真実・誠実・心の平和
グリーンアベンチュリン:チャンス
アクアマリン:聡明・勇気・知恵・幸福
ハナビシソウ:富・成功・私を拒絶しないで
コブシ:友情・友愛・愛らしさ

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あなたの誕生月&日の石と誕生日花をキーワードにつづる少し不思議な物語
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